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天使のたまご アニメ~2.そこに出口があったとしても~

天使の卵
の、続きでございます。

この時代のアニメーションの、技術的な部分は
よく分からないのですが
それでも、すっごい映像美です。


天使のたまごop

この少女の住む街を見ていると
いわゆるディストピアなんですが
「滅びの美学」にまで行っています。

酒場には銛を持った男達がひしめき合って座り、ひたすらじっとしています。

巨大な魚の影(シーラカンスっぽい)が大量に出現。

建物の壁にも路上にも現れます。

男達は影に向かって、次々と銛を打ち込みますが、何しろ影なんで捕まえられません。

このシーンは、いろんな漫画家に影響を与え、有名漫画の中で出くわす事があります。

萩尾望都氏も、このアニメの影響を大きく受けたそうです。
バルバラ異界
ではモチーフを使った扉絵の他、この魚群シーンもチラッと出てきます。
萩尾先生は
「魚を求める集団による、一種のヒステリーと、その具現化」
と定義しています。

それと、当時のパンフを読み直すと
普通のセル画を重ねて
きちんと「街路の下に影が写ってる」ように見える撮影をしています。


大勢の大人に怯えて、少年にしがみつく少女が呟きます。

「魚なんて、いないのに」

それで博物館みたいな所に少年を連れていき
天使の化石としか見えない物を見せます。

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少女はそこで拾った「天使の卵」を、ずっと暖めていたのです。

少女は
実は大人の女性ではないか
と思わせるシーンがあります。

早くに両親など家族を亡くしたせいか
この世界で幼児退行を起こしたのか
やっぱり少女なのか
はっきりしません。

少年も、妙にオッサン臭いです。

卵の中には何もない

と諭す少年ですが
少女は信じず、大切に抱いたまま眠ります。


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こちらは
サイボーグ009:re cyborg」
の化石。

少年は少女の元を去り、海岸で人工太陽を見ています。
その人工太陽には
たくさんの人の像か化石が並んでますが
そこに少女の像もあり、少年は何かを悟った表情になります。

舞い上がる羽毛の中、カメラが俯瞰になり
この世界が何で出来ているのか観客は知ります。

本当にどうしようもなく閉ざされていて
多分、未来がないのです。

少女が抱えていた卵の中身は
明日とか希望とか未来とか
そんなような物で
実らない卵を暖める事だけが、少女を生かしていたのですが
不思議と閉塞感がありません。


昨今の世の中でも
「自分の世界」にとじ込もっている人は多いし、その方が良い事もあります。

グローバル化と呼ぶ「卵を割る行為」が声高に叫ばれるようになって
世界は広くなるハズだったのに
かえって息苦しいのが今です。

しかし、バブルでみんなが踊ってた時のアニメとは思えない、逆にそういう時代だったから制作が許されたのかもしれません。

「孤独の必要性」

みたいなモンについて考えたモノです。

ちなみに、このアニメにインスパイアされて
ベルギー出身の映画監督カール・コルパートの作品
『In The Aftermath: Angels Never Sleep』(日本未公開)
という実写映画があります。

オリジナルのアニメ・シーンを交えて作られてますが
低予算の作品です。

大戦争の後、大気が汚染されて、まともに暮らしていくのが難しくなった世界。
一人の兵士が卵を持った少女の幻影を見ます。

いろいろあって、ラストは世界が浄化されていくという話です。

面白いのは、少女が天使として描かれているところです。

著作権がテキトーだった時代でもありました。

そうとは思わず、傑作を作ってしまった押井守監督や
そのきっかけみたいな物は
誰しもが持つ物でもある、と感じます。


天使のたまご [DVD]

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いつも読んで下さって
ありがとうございます。


茹で玉子にするのなら、何分間くらいかかるんだろう。