夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

三次元の男は嫌い。

ドカ雪が降った千葉県某所から
こんばんは。


「少女漫画を読まなくなった」

と前回のブログで書きましたが
よくよく考えたら、
若い頃もそんなに読んでなかったような気がします。

彼氏彼女の事情

は読んでましたが
他はもう無理。


リアルタイムで読みそびれてて
最近読んだ漫画の傑作に

パースペクティブ・キッド」

があります。

イチオシ!
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筆圧を
一切感じさせない製図ペンで書かれた、
イラストレーションと呼んでも差し支えない冷たい絵。


ひさうちみちお氏は
最近は
聖書を題材にした作品が多いんですが、
エッセイ漫画が多い方です。

けれど
この冷たい線の絵には
冷たいメロドラマが
サイコーに似合います。



19世紀末か20世紀初頭のヨーロッパでしょうか。

デカダンアールヌーボーな文化が
ふんだんに散りばめられた世界。


正体不明の美青年・キッド。


街のカフェで
いきなり人を浮かせたり
あるいは男色家を暗がりに誘い
怪我をさせて金だけ奪うチンピラ。


その美貌と
何者か分からないミステリアスな部分に惹かれて
いろんな人間が振り回され追いかけ
やがて彼を求める人達同士が追いかけ合うように。


ひさうちみちお氏が
あとがきで書かれている通り、
前衛劇作家の
「マーフィ」
の模倣(後日ご紹介)。


キッドのモデルは
ティノ・ロッシ
というシャンソン歌手だとあったので
ググりました。


どんな妖艶な青年なんだろう。

ビジュアル系なら嫌だな。


妄想が止まらない。


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ググるんじゃなかったと
激しく後悔した49歳の冬でした。



いや、
ティノ・ロッシは十分、
魅力的でイケてます。


わたしの妄想が悪いの。

あり得ない存在を期待してたから。


「キッド」

は男爵やら
(自称)物理学者やら
ダンサーやら
そのダンサーの嫁はんやら
いろんな人間を虜にします。

ダンサーの弟子はキッドとつかの間の恋に落ちたり
しまいには吸血鬼までもが
キッドに夢中になります。


そんで







キッドが喋るシーンは
ほとんど
なし。


ひさうちみちお氏の作品の特色は

女性の心理描写が抜群に上手く
マトを得てる所です。


老いに怯えるダンサー、
貴族の夫人という以外には何ら認知されてない男爵夫人のフラストレーション、
どう考えても
未来は幸せになれそうもない市井の女。

こうした人達の叫びを書かせたら
天下一品です。


自分が幸せになれそうもない

てのは確かにキツいけど
もっとキツいのは

「自分は誰かを幸せに出来そうもない」

って事を自覚した時です。


軽い身のこなしで
人々を飛び越え
何も語らず
翻弄するだけのキッド。

やがて時空を越える存在になります。


リアルの男の
苦悩や上昇思考って
ホントに
聞いててウザい。

夢語りする男が多過ぎる。

畳んでしまえない風呂敷を広げる男に
ほだされる女が多いからです。


不景気で
現実主義者な女の子が増えたら
男性アイドルはお金にならなくなります。

みんな
リアルの男にお金を使うようになるでしょう。


キッドくらい冷酷に徹してくれれば
アダな夢見て泣く事にはならないのに、
現実の男は
中途半端に優しく
中途半端に傷付けて来るのです。


ああキッド…………今頃はどこに…………と、
キッドに魅せられた人間同様、
わたしも夜の街を徘徊し探し求めるのでした。


好きだ愛してると
モッコリさせて押して来る男って
何て不純。


では、また。

パースペクティブキッド

パースペクティブキッド


読んでくれて
ありがとうございます。


「夢を語らない」
から
カッコいいのです。