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夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

蛾の行く先~鳥取連続不審死事件~

皆様、
おこんばんは。

わたしが興味を持って追っかけていたルポルタージュですが、


「誘蛾灯」(青木理講談社


です。


読み進むにつれて

「これは日本の『貧困格差』が起こした事件ではないか?」

と思い、
関連書籍を出来得る限り読みあさりました。


ほぼ同時期に起きた
「首都圏連続不審死事件」
は被告・木嶋には
「おっかけ」としか言い様がない

「カナエギャル」

と呼ばれる女性達まで現れました。


この事件は
ネットを活用し
古臭い「日本の良妻賢母」を演じていれば、三十代なかばの肥満体型な女性でも
ホイホイお金を融通してくれる男性がいる…………と三十路女性に
明らかに

「希望」

を与えているのです。


反面、
鳥取の事件の舞台は
寂れた歓楽街、
その最下層の飲み屋。

来る客も
年金暮らしや生活保護受給者が多く、
ボトルを入れても四千円から五千円、
という格安さ。


この店で働いていた上田美由紀被告の月収は七万円ほど。

子供が五人もいる上田ですが、
これでは最低限の生活も出来ません。

スナックの経営者が上田を可愛がっていて
自分の古い平屋のアパートに住まわせています。

写真では、
平屋のアパートから
ゴミが溢れ返り、路上にまで侵食しています(事件後、このアパートは取り壊されています)。

ゴミの処分に19万円かかったとありました。

こんな状態になった理由ですが、
「モノを捨てられない性格」
などではなくて、
地方格差ゆえの貧困と最底辺の暮らしのせいです(後述)。


ところで、この二つの事件、
木嶋と上田は同年代、体型も似ているし、男性から大金をせしめる手口など、
事件の性質は驚くほど似ています。

けれど、
決定的に違う部分があります。


一番の違いは
上田は
身の丈に合わないブランド買いやグルメなど一切していません。

そして、
首都圏連続不審死事件は
初期の頃
いずれも焼死や自殺と最初は処理されています(そのせいで発覚が遅れています)。

しかし
上田の周りで亡くなっている男性の内、数人は
明らかに殺人です。


上田は男性に
妊娠した、流産した、中絶する、
などなどの嘘をつき
多額の金をせしめています。

そして
数千万円もの金をどうしていたのか。


スーパーや量販店に行き
大量に買い物をする、
洋服は汚れたらゴミとして捨てて
また新しい物を買いに行く…………そのせいでアパートはゴミだらけになった訳です。

料理ですが
鍋物をしたら
残った物は鍋ごと捨てるというダイナミックさ。


全国紙の記者だった男性は
地方支部とはいえ、バリバリに働いていたのに
上田と付き合うようになってから
ライバル社や取材相手にまで借金を申し込むほど貢いでいます。

ものスッゴイ美男子で
ヨン様
と呼ばれていた警察官(写真を見ても文句なしの美男子)は
金銭トラブルのせいか
冬山で自死しています。

最後の同棲相手は
やり手の営業マンだったのに
あっさり仕事を辞めて
下着に近い姿で
上田の店に来るようになります。


木嶋は拘置所からのブログで
上田をバッシングしてます。

勾留されていても
「おじさま・年下のBF」
と支援者を作る木嶋です。

青木理氏に取材して欲しいと熱烈に訴えています。


そして、
上田は木嶋と違った形で
木嶋に対抗心があるようです。


「東の方の事件とは比べられたくない」

青木理氏に話しているシーンですが

「私はかなり痩せたのに」

と笑っていたとあります。


上田からすれば

「木嶋だって、北海道から東京に出ただけの田舎者のクセに。
グルメ自慢や食べ歩き自慢、
女子力とかひけらかしてる鼻持ちならないオンナ」

というところでしょうか。


そして、
上田は
押しかけ取材に
拘置所へ面会に来た青木理氏に距離を置いています。

「公平に中立に、ちゃんと書いてくれるかどうか考えて決めたい」


例えば、
東電OL事件」

「捕まった被告は
実は冤罪だったんじゃないか?」

と他のライター達に考え直させた佐野眞一氏のように、

足利事件

被告に無罪を勝ち取らせた清水潔氏のように。

有名で
マスコミを動かせて
影響力を与える事が出来て
何より、ベストセラーを書く事が出来る筆力があるライターなら自分も…………。


そうした人物かどうか見極めているようにも思えます。

取材を受ける相手も
大手の固い読み物が多い週刊誌ではなく、
風俗情報やヌードグラビアのページが多い分、
たくさんの人に読まれやすい週刊誌を選んでいたりと、
地味な分だけ腹黒い計略が
透けて見える怖さ。

小洒落て手間暇のかかる料理や
行き届いた家事など放棄し、
車中やラブホテルを転々とするような
「毎日がキャンプみたい」
な生活を一年間、
共にしていた男性もいます。

相手の男は
中学生に還ったようで楽しかったでしょうか。


わたしが心底、怖かったのは
青木理氏が事件について尋ねる度に

「それはもう、やってませんとしか」

「今は話せないです」

「いつかきちんと」

「そんな事が発表されてるんですか」

と活字からですら、
もどかしい。


玉ねぎを剥いても剥いても
中心が出て来ないもどかしさと
その場その場で必要のない嘘を簡単につき、
すぐ忘れてしまう得体の知れない普通ではない何か。


わたしの親戚や間接的な知人に
こうした女が何人かいます。


「奢ってくれるから良い人」

「お金持ちだから良い人」

「自分の言う事を鵜呑みにしてくれる人が理解者」

そんな人達です。

ほら、
グループでドライブとか行くと
道が分からなくなる事がありますよね?

そういう時、
初めて来た場所なのに

「ああ、ここ知ってる。
左に曲がるといい」

なんて適当な事を言って
更に迷子にさせる人。


この人に
何のメリットがあるのか分かりませんが
とにかく
「仕切りたい」
「一目置かれたい」
「すごい」
と言われたい人。


上田は今で言う「マイルドヤンキー」に近い層です。

地元とか仲間とか
そうした意識に支えられて
友達といろんな物をシェアしながら
少ない月収で生活している層です。

ショッピングモールぐらいしか行く所がなくて、
そして何も買えない、
ダラダラ過ごすだけ。


上田はそうした地元友達すらもいないようです。


嘘も
「実は看護師の資格を持っている」
「妊娠したけど三つ子で
薬で小さくしてから堕胎する」

と適当過ぎる嘘をつき、
時には「アケミ」という架空の妹すら出現させて
ターゲットの男性から金品を巻き上げて行きます。

「どこの病院にいたの?」
「『アケミ』って、君がいる時には同時に現れないけど」

と嘘に気付いて
嘘がバレそうになった男性からは
適当な時点で逃げています。


二審の判決の頃で
お尻に火が着いているいるどころか、
このまま行くと
髪まで燃えさかる可能性が大きいのに、
拘置所の中で、のらりくらりと
核心からズレた返答をしていれば
いずれは保釈されるとでも思ってるいるのか、
あるいは現実を直視していないのか、
と最終章に思いました。

青木理氏は

「被害に遭った男性たちは
実はどこかで堕落を望んでいたのではないか。上田は
その誘蛾灯の役目を果たしただけではないか」

と考察していました。


確かに、
被害者達は
夫婦間の不仲や
頑張っても地方局の記者でしかない自分や
そうした
『男のプライドを保つ事』
に疲れていたいたのかもしれません。


青木理氏の前述の考察も
『男の生理』
を自覚した上での物でしょう。

けれど、
わたしは別の考察をするのでした。






『男という生き物』






帰宅したら部屋に灯りが灯っていて
こざっぱり片付いていて
暖かい食事が出来ていて風呂がわいていれば、
夜の蛾のように帰って来るモノなのです。


そして
その家の中で待っている女は







誰でもいいのです。





そうして
こうした犯罪が増えるだろうなぁ
と思っていた矢先に
京都府日向市のニュースでした。


女のディフェンスは
男のディフェンスの全く違うと
つくづく感じるのでした。





いつも読んで下さって
ありがとうございます。


最貧困女子 (幻冬舎新書)

最貧困女子 (幻冬舎新書)

誘蛾灯 鳥取連続不審死事件

誘蛾灯 鳥取連続不審死事件


最高裁
黙秘して自分を語らない上田は
このまま語らないままでしょうか。

語るべき「自分」が存在しないから。