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夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

絶歌~1.前夜~

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〈このストーリーはフィクションです〉


都内、某出版社。



「おおい、プー君いるかい?」

「社長。
本名が熊沢だからといって
『プー君』はやめて下さいと何度も言ってますが。
まるで働かないでブラブラしてる男性みたいじゃないですか。
このナイスバデーな妙齢の女性に」


「自分で言ってるし。
あのさ、幹部会議でも決まらなくて困ってる事があるんだ。
さりとて、他の社員では外に話が漏れる可能性がある。
それで君に聞きたい事があって」


某出版社はそこそこ有名な出版社ではあるが
平成の出版不況のルビコン河を渡れるかどうかの毎日。


とは言え、他に比べて少ない従業員で
好きなテーマを追い
マイペースで稼いでいる。


社長も初老にはまだ少し早い年齢で
扱うテーマが若いのも幸いしている。


「熊沢君なら、と思ったんだよ。
なんせ
風俗情報紙に

『夜のマタドール』

ってタイトル付けて
マタニティの本かと勘違いして買った主婦から苦情が来るし」


「『マタドール』は『闘牛士』って意味です」


社長は薄く笑う。


「普通は『快楽大全集』とか分かりやすいタイトルにするんだけどね。
それで、これがそうだ」


社長は熊沢にコピー紙を数枚束ねた物を渡した。

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何枚か目を通して熊沢は顔を挙げる。


「これは…………」



「本人ではなく、
『代理人』
と称する者が持ってきた。

うちだけじゃなく、
他にも何社か持ち込んで断られたそうだ」


熊沢は冷静な顔のままだ。


「それで、何故、私なぞに意見を聞かれるんですか?」


社長は少し言いにくそうに言った。


「書いた人物と君が同年代だからだよ。
この時代の空気、
ってのを分かるかな、
それだけだよ」


「それで?」


社長は重々しく社長の顔に戻って答えた。



「これをうちで出版しても大丈夫か否か。
君の意見を聞きたい」


「分かりました。
秘密にしますので
全文PDFにして読ませて下さい。
紙だと
うっかり紛失した時、大変な事になるので」






手記の主は「元・少年A」だった。









そして、
当時呼ばれていた
別の名がある。



その名は


























酒鬼薔薇聖斗








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きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)

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〈続く〉