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夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

絶歌~7.ゲームの始まり~

熊沢は淡々と語った。


「2月、Aと同じ中学の3年生、彩子(仮名)は」


「『(仮名)』
とか言わないで」


「自宅に帰ったある日、
誰かがしつこく玄関のドアノブを回しているのを見て戦慄します。


その数日前、
Aは新しい上靴を彩子(仮名)に踏まれています。
謝らず行ってしまった彩子(仮名)を
つけ回します」


「だーかーらー、

『(仮名)』


ての止めてえ」


「不思議に思いません?

今より少子化が進んでない中学。
生徒がわんさか、
佃煮にできるほどいるのが学校という建物。

すれ違いざま
追い越されぎわ、
ぶつかったり
ぶつかられたり。

そんなのが当たり前なのが学校。

なのに何故、彩子なのか」



社長は唸った後、
はっとひらめいたのか答えた。


「…………靴、なのか?」

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「前述のテッド・バンディも
逃亡中、
大量の靴下や
おパンツを買い込んでます。

理由を聞かれて


『人って
使いきれないくらいの靴下や下着を持っていたいモンじゃないの?』


と逆に聞き返しています」


「『パンツ』に『お』を付けるのも止めて。


靴や靴下ってのは
フェチを誘うアイテムだな」


「Aは
ナメクジや猫の解体で射精している。

性的快感を得ています。

彩子をどうしたかったのかは分かりません。


彩子の住む団地の階段で待ち伏せしてて
この時は友達と一緒で
すぐにAとは話さず
逃げています。


その次も団地の近くで待ち伏せされていますが、
彩子はやはり友達と一緒でした。


そして、
逃げようとしたAは







逆に恫喝されてます。


中3女子二人に
学年とクラスと名前を言え

と叫ばれています。


この時Aはバッグを持っていました。

多分、中身はナイフ類。


彩子と友達は
ダッシュして学校に引き返し
教師に
勢いで生徒アルバムを見せるように頼んで
Aを特定してます。


後日、事が明らかになって
Aの母親は彩子の家に謝罪に行っています。

ストーカーに近い行為なのと
彩子にはほとんど落ち度がないし
しかも、A一人での行為。
さすがに謝るしかなかったのでしょう」


「…………最初の被害者は小学生の女の子ではなく…………」


熊沢は答えない。


社長が言葉を繋いだ。


「Aは
彩子(仮名)の一件で


『学習』



したんだな?


『失敗を次に生かした』


んだな?


次はもっと弱い、小学生の女の子をターゲットに選んで」


「その後の、やはり2月中に
小学生の女の子が
ショックハンマーで殴られています。


これは幸いにも死亡に至らずに済んでいます。


3月には
八角玄能という道具で
次にはクリ刀で」


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熊沢は表情を作ると
中学生っぽくみえるようにだろう、
訥々と話した。





「ボクって変なんだろうか。


友達とAV見てて
友達はギンギンに興奮してたのに
ボクにはただの風景にしか見えない。


ナメクジや猫を殺した時は
射精したのに。


猫も飽きてきた。


あ、あの女子はいい。


やってみよう。


ダメだ。
強過ぎる。

たった一学年ちがうだけなのに
歯が立たない。

母親にもバレて恥をかいた。


もっと弱い小さい子にしよう。


ショックレスハンマーだとダメだ。
もっと強い武器でないと。


やった!

今度は成功した!

次はもっと派手な
そう、ナイフが良い。


これも成功だ!


あー、でも人を殺したから
捕まったらボク、
死刑になるんかなぁ。


その時のために
仕掛けを今からこしらえておこう。


頭がおかしいとか
二重人格とか
セーシンカンテーされるように。

そしたら死刑にはならないって
本に書いてあったし。


想像の変な思想、
架空の神様を
ノートに書いておこう。


信じてないよ、こんなん。


オカンは

『いい学校出て
いい会社に入らないとお父さんみたいになる』

って言うけど、
あの大きな地震阪神淡路震災で

『いい会社の人』

は社屋倒れてて途方にくれてたし、

『いい学校出てる人達』

が地下鉄でサリン撒いたりして人をたくさん殺してた。


『絶対、安心』


なんか
この世にない。

人間が簡単に壊れるように。


ああ、でも、
小学生の女の子はダメだな。

簡単に壊れてしまい過ぎる。


もっと時間をかけて楽しんで
その後もいろいろ弄りたい。


すごいな。


ボクが他人の『死』をコントロール出来るなんて。


ああ、あの子にしよう。


男の子だけどーー」





社長が右手の平を前に出して遮った。


「やめてぇ。怖いぃ」


熊沢は答えた。





「怪物を観察する時は気を付けよ。

深淵を覗く時、
深淵もまた、自分を見ている」






当時、流行ったニーチェの言葉だった。


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〈続く〉