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夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

絶歌~8.コントロール~

社長は最初は少し興奮ぎみだったが、
少しすると
腕組みをして考えるポーズになった。


「ただ…………何か腑に落ちないな。

つけ回した上級生は女子。

ハンマーやナイフで襲ったのも女子。









なのに何故、
最後の被害者は男児なんだ?






よく言われる

『ナイフや凶器がぺニスの代わり』

だとしたら」


くくくっ


と熊沢は笑った。


「それはあくまで『俗説』です。


その説が正しいなら
何故、
最近、
若い女の子が
ナタや斧で人を殺傷するような事件が起こるんだと思われます?


『女の子は非力だから』


それゆえ扱いやすい毒物や包丁を選ぶとおもわれがちですが
田舎でもない地域で斧を買ったら目立ちません?










ナタや斧を選ぶのは
非力な女子でも
一撃で殺せる武器だからですよ。


『ナイフ=ぺニス』


は短絡的な分析です。


そうですね…………例えば、
Aは
猫を殺して性的快感を得ている。


これが人間なら
もっと強い快感を得られるのではないか思ったんじゃないでしょうか」

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社長はブルッと身震いした。


「え、よく…………分からない」


熊沢は聞き返した。


「『快感』は必ずしも性的なものだけだはありません。

クタクタに疲れた時の眠りおちいる瞬間、
最高級の肉を焼いて食べる瞬間
汗をかいた日に飲むビール、


これらは
その時は性的な快感以上に快感ではないですか?」


「つまり、五感での快楽を、殺人で得ようとしていた…………?」


「ついでに、Aは被害者の血液を舐めたりしてますが
何の快感も得られなくて
がっかりしてます。


手記だけで断言するのは
危険ですが
Aは










他人の苦痛でしか悦べない
暴力を駆使している時にしか安楽を得られない









そうした種類の人間だと
どこかで気付いている」


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社長の顔色がみるみる青ざめていった。


「それって、精神医学的にはどう診断されるんだ?
暴力と性的欲求がセットになってるなら
まだ分かる。

殺す事そのものが快楽って
そんな病気があるのか?」


「病気ではないんでしょう。

ただ、ハンマーやナイフで
通りすがりに殺傷するのでは
被害者をコントロール出来ない。

あっけなく死んでしまう。


けれど









絞殺なら
自分で被害者の死をコントロール出来る可能性が増えます」


「他は、通り魔で
最後の被害者は何故」


「学校、両親、社会に対する反抗。




2月の上級生へのつけ回し、
2月の通り魔
3月の通り魔
そして最後の事件。


これを縦に結びつける人物は少なかったと思います。

現に
2月3月の通り魔は
よそ者のロリコンが車で来て起こした事件、
と住民は考えていました。
マスコミもそうだと報道しています。

報道自体が少な目。


世間と言う観客をどこかで欲していたAは
最後の事件を起こし
犯行声明文まで送っている。


けれど
警察は
割りと早い時期に
全ての事件を縦に繋げて
しかも
Aをマークしていました」


「え?そうなの?
テレビでは
中年男性とか
白いセダンとか黒いセダンとか
レポーターが騒いでいたけど」


「マスコミは
最後の被害者・淳君の父親が怪しい、
知的障害を持つ淳君が邪魔になったのでは

張り付いていました。


よくよく考えると
これも警察が流したミスリードかもしれません」


「それでAは止めればいいのに
第二の犯行声明文を出したのか」


熊沢は
本の山から煙草を取り出し
一本くわえて火をつけた。


すごく旨そうに一服して
続けた。


「2月の通り魔から
最後の被害者が出た後も
Aの学校では
ある噂が流れていたんです」


「犯人像とか」


「いえ。
かなりの生徒が
学年、クラス関係なく話していたそうです。
























酒鬼薔薇って、Aなんじゃない?』












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〈続く〉


地雷震(15)

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