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夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

サークルクラッシャー~「ヨイコノミライ」他~

注※ネタバレを多少含みます。

注※この手紙はフィクションです。多分。





萌絵ちゃん、先日はありがとう。


受験勉強忙しいのに大変だね。

初めて会って

「心理学とか教えて下さい!」

と言われた時は驚いたよ。

けれど本当に勉強熱心で
絵も上手で、
って上から目線だね。


「上手」どころか、すごい綺麗な絵で
私はびっくりしました。


それでいろいろお話したけど、
一番引っ掛かってる事


サークル・クラッシャー



の件ね。


サークル・クラッシャーと言えば
たいていは


「童貞男子率が高い漫研なんかに入ってパコリにパコッて
男子部員同士を喧嘩させてサークルを崩壊させる」


てのが主流だと思われがちです。


目的は
複数の他人を自在に操れる快感が得られるから。


会社、なんかだと不可能に近いしね。

それについては
ホラーで有名な押切蓮作さんの
「オタサーの姫」
が分かりやすいです。


それと、この作者は天才だと私は思う。

Webで無料で読めます。

異性関係でなくても
サークルの人間関係をややこしくし、
参加者を不快にさせるタイプも多いです。


「ヤサシイワタシ」


は大学のカメラ部なんだけど、
ヒロインがネガティブな感情はすぐに口に出す、
けれど本音は語らない、
ってサイサクなタイプ。

何とか写真で食べて行きたい
けれど何にも出来ない
やがて、
本当に心配してくれる人達からは離れて
ドラッグやって
性的にも無茶苦茶になって






自殺してしまう。



問題は
このヒロインが自殺する事で
サークルの人達がとてつもない重い「何か」を抱えさせられる。



彼女の中に見える自分が怖くて
しばらくはみんな、ひじょうにしんどい思いをします。

やがて上手く自浄作用になる女の子が現れて
主人公を含めて
ゆっくりと傷を癒していくプロセスが素晴らしいです。



それで萌絵ちゃんは
自分の高校の漫研
同じ一年生の時に入った、
やはり一年生の青木さんが
そうなのか
と思ってるよね。


だとしても、何かするつもりはない、
何が起きていたのか知りたい、
萌絵ちゃんはそう言ったので
私の直感を含めて書いておきます。


青木さんは美人で
休みがちだけど普通の女子生徒で
それを装ってるタイプなんだけど…………「根っからの悪人」
ではなく、
何らかの理由で少し心を閉ざしてるだけに見える。


井之上君が「将来は編集者になりたい」と願ってて、
一年生で部長やってて
けれど編集者の仕事を具体的に知らないから
せっかく作った同人誌は売れず終い。


オタクとしても
古い手塚漫画で感動してて
ぬるい。


けれど、そこに青木さんは惹かれたと思う。


「良い面も悪い面も含めての青木さんを受け入れる」


これってすごい事よ。


大人の男でもなかなか出来ないよ。


「無責任な批評家」でしかない天原くんをつついて、
部活を混乱させたかもしれないけれど。


同人で人気サークルやってる衣笠兄弟は漫画を描いてるのは

「商売」

と割り切ってて、
プロになるつもりはない、
特に兄・一輝より
弟・瞬のスタンスは
冷たいんじゃなくて、
同人で売買を実際に体験してるからゆえの発言だと思います。


で、大門さん。


「ザ・女」


だよね。


それでも「美人」と呼ばれて
ちやほやされてきた女の子の典型だよ。


アニメみたいに「アホ毛」まで立てて
アニメ声で話して
声優志望。


美人と呼ばれる女の子は
たいてい、周りにおだてられて
何とか芸能人になろうとする傾向がある。

で、挫折する。


「美人」以外に何もないから。


大門さんもその辺りを分かってて
アイドルなんかは無理でも
声優なら
アイドル声優になれるかも
というリアリストかつ、打算が見える。


上田君はまあ、残念ながら
あのままでしょう。

大門さんとひじょうに似てる所があるけど
向かうベクトルが違う。


これからも
大門さんみたいに「悪目立ち」してる対象を見つけて
ストーカーしたりして、それでも普通の社会人になるような気がする。


大門さんの「ザ・女」な部分が好きで

「自分に頼ってくれる誰かがいないと不安」


桂坂さんは
BLな小説を描いて
リスカして「ボク」が一人称で…………案外、こういうタイプが
小説で大成したりするケースが多いよ。


しかも、はっきりした意見を持ってる。


弟・瞬君は女の子をバカにしてて
コミケでも遊んでて
大門さんがモーションかけてきたら
こいつは相手にしたら
しつこそうと流してたのに
桂坂さんには真剣にホレてしまったのも分かる。


何だかんだ言って、カッコイイから。


瞬君を盗られた!

と桂坂さんをブン殴って、
大門さんは多分、
声優にはならないんじゃないかな。


本来の自己顕示欲が満たされる方向、
グラドルとか目指すのでは。


で、……………………そう。

一番大切な話。


萌絵ちゃんの親友だった平沢さん。


合同研修の後で
用事をでっち上げて
何回か様子を見に行ったよ。


先に書いておくね。


萌絵ちゃん、太ってる事がすごくコンプレックスで
通りすがりの人にデブと言われたら挑みかかってたりしてたそうだけど、
今はそういう攻撃性がないよね。


結局、漫研の部誌が売れなくても

「売上ゼロはゼロじゃない」

と考えられる大人になった。


綺麗な男の子と知り合って
彼が漫画に必要な専門書やら
製作の基礎知識とか
いろいろくれても
それを作品に昇華させて
無理なダイエットとかせずに
適当な距離を置いてる。


それはきっと、
萌絵ちゃんが本当に好きな事を
本当に一生懸命やってるから。


「本当にやりたい事」

を知ってる人間は…………そう。


平沢さんみたいな女の子を
私は何人か見て来た事がある。


井之上君への失恋は
確かにキツいきっかけだったと思う。


けれど
眉を整えてオシャレするのは
「自分を虚飾の物にするだけだ」
と女の子としての努力は放棄して
それでいて、青木さんへは牽制かける。


「自分は変わりたくない。変わるには努力が必要だから。
それはすごいエネルギーを使うから。
だけど、周囲には変わって欲しい」





こうした人達は大人にもたくさん、
本当にたくさん、居る。


平沢さんのイケてるお姉さんが
平沢さんの好きな

「壮大ファンタジーBL」

(字面すげえな)の世界観を笑うのが分かる。


平沢さんは
そうした漫画のキャラが言う台詞と同様

「運命に導かれた1つだけの恋」

「どんな試練にも引き裂かれない絶対な相手」

「何が起こっても続く永遠の愛」






が突然、降って来るのを待ってるだけ。


それってさ、





誰かと一緒に作って行くモノだと
私は思うんだけどねぇ。


それで、
井之上君が風邪気味なのにも気付かず、
クラス仲間との約束もブッチさせ、
クソ寒い校外で手の込んだ3K弁当(固い・辛い・臭い)を食べさせる。


「陽光の下での彼氏とのランチ♪」


そう、彼女は
テンプレート通りしたかっただけ。


相手の事を全く考えず
ウダウダ言って結局自分のしたい事を相手に強要する。


おっかけ厨してた同人作家の事も
本当はそんなに好きじゃないと思う。


自分が描いて欲しいキャラじゃなかったからと萌絵ちゃんにポイと絵をあげる辺りとか。


上手く描ける作家に
自分の願望を描いて欲しいだけ。


平沢さんにしか見えない王子さまも






実際は自分






という事が分からない。



学校でね、何度か見たと書いたけど
私は少し驚いたの。






あの状態で通学はきちんとしてる事に。


ご両親にも話を聞いたけど、
トイレやお風呂といった身の回りの事は
何とか自分で出来ているし
食事も摂ってる。


高校だけは何とか卒業させてやりたいと
ご両親は希望してるので
それは叶うと思う。


けれど、彼女は
自宅でも同じなんだそうです。










放課後の
誰もいない教室で
彼女にしか見えない部員たちと王子さまを相手に


新作のアニメや注目の漫画について



「会話」



をしている。






安全だから。


もう、誰も彼女を傷付けない。

萌絵ちゃんを傷付けたように
誰かを傷付ける事もない。


終わらない高校の放課後に
ずっと、たゆたっている。






自宅では
好きなジャンルの漫画だけを読み、
放っておくと一晩中、
「会話」
をしている。


とても幸せそうに。


今、萌絵ちゃんも彼女も
三年生だよね。


卒業したら。


残念だけど、
彼女は現実の世界に戻って来ないと思う。

そして、無理矢理、現実に戻すのは
私は可哀想だとも思う。


きっと、ずっと、あのままだろう。


思春期に誰もが大なり小なり持つ、
自己愛は
少しづつ減って行く物なんだけど、
彼女はそれが以外に大きすぎた。

彼女が弱かった訳じゃない。


それで、相変わらず
描かれる事のないストーリーのプロットだけを
キャラクターの設定だけを
ひたすらひたすら書き続けていくんだと思う。

それに関して
萌絵ちゃんには
何にも責任はないし、
そうだなぁ…………今まで通り、
遠くから見守っててあげて
高校卒業後は自分の事に邁進する方が良いでしょう。


もう、友達が何とか出来る段階ではない。

青木さんの引いたトリガーは小さな物で
せいぜい漫研の活動を停滞させた程度。


壊されたように見えて
真の意味で壊したのは
平沢さんかもしれない。


夢は形を変えながら
その人を静かに支えて行くモノだから。


「現実」を拒否したら
「夢」からも拒否されるのかもね。


いつも読んで下さって
ありがとうございます。