夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

透析治療が納得いかない様子の長谷川豊様へ。

長谷川豊様へ。


元アナウンサーの貴殿ならば
木之本 興三
という方をご存じかと思います。

J1リーグ立ち上げの時、ほとんど全ての仕事をこなした人です。

この頃はバブルが弾けていて、経済的な暗闇が、じわりと見え始めていた時期だったので
プロサッカーでの経済効果を期待している人も多かったです(バブルよ、もう一度と願う人がガチでたくさんいました)。

プロ野球と同じように
「チーム名にスポンサー名を入れて」
という希望を蹴って(元サッカー選手だったからかシュート、ではなく)、
ヨーロッパやブラジルみたいに

「チームは地域の物」

と強く主張し、チーム名からスポンサー色を排した事は有名です。
結果として、これが疲弊しかけてた地方には良い結果をもたらす事になりました。

ちなみに、私の出身地・京都ではイマイチ盛り上がってなくて
デパートに行って「パープルサンガのグッズはどこですか」と聞いたら

「あんまり置いていません。





サンフレッチェ広島のなどはいかがでしょうか」





と薦められた事があります(号泣)。

この木之本氏ですが
二十代に

「グッドパスチャー症候群」

という難病にかかり
腎臓を摘出、人工透析を週に三回受け始めています。
診断名を告げられた後、奥さんには離婚を申し出たそうです。
それほど、難しい病気で
家族の支えは必然的に奥さんになるので
その負担を慮っての事だったと思います。

そして、週三回の透析を受けながら
Jリーグ立ち上げという大仕事をこなしていたそうです。


私が小児科に実習に行った時に
中1で週に三回の透析を受けている男の子がいました。

明るくて人気者で
小さい患児と、よく一緒に遊んであげていました。

配慮が出来る子で
「赤ちゃんがいるから、ボール遊びは止めよう」
とか他の患児に声をかけていたりしました。

私に
「プレイルームにさぁ、七段飾りの雛人形
でっかいクリスマスツリー置くのはどうかと思う」
と言うので

「そうだねぇ。ぶっ壊しても良いって事だよ」

と、ひじょうに無責任な解答をして笑わせた事があります。

この子も難治性の難病でした。

それで、ゆくゆくは人工透析を受けながらでも出来る仕事をやりたいと言っていました。

人工透析に至るまでには、いろんな疾患があります。
長谷川様が指摘する
「糖尿病のコントロール不足や暴飲暴食の結果、人工透析に至る」
という人も全くいない訳ではないのですが
これは実を言うと貧困と絡んでいます。

十分な治療や通院、インスリン代が支払えず、無理をして働き、足のちょっとした傷が、あっと言う間に壊死を起こし、切断する他ない、という状態まで我慢していた人が増えています。

また、血糖コントロールのための食事管理は家族の協力が必要不可欠でして
独身でワーキングプア
自炊が出来ないまま中高年、という男性に一日1,200カロリーの献立を作れと言うのは

「ご飯も炊いた事がない」
とゆー人に
いきなり
「冷蔵庫の余り物でフレンチのフルコースを今すぐ作れや!」
とゆーぐらいの無茶ブリです。

医療費が国家予算を圧迫している、といろんな方が仰っていますが(主に橋下氏とか橋下氏とか橋下氏とか)、
難病に対しての社会保証すら取り上げられた場合
それは
死の宣告と同義です。

腎臓が機能していない
ということは汗をかかない・水分もかなり制限される事になります。
また、人工透析のために血管を持ち上げる手術をしますがサポーターをしていても
怪我をしやすい仕事は難しくなります。

例えるなら、プロボクサーは
ヘビー級以外、水1滴自由に飲めませんが
力石徹の減量生活がが腎移植を受けでもしない限り、一生続きます。
まあ、力石さんの場合は
フェザー級からバンタム級くらいに無理やり体重を落としたので(しかも短期間に)あのような結果に……話がそれて申し訳ないです。

人工透析を長期に浮けていると
皮膚への変化も大きく、絶え間ないかゆみに悩まされる人も多いです。

とは言え、希望がない訳でもなく、夜間に人工透析を受けて昼間は働いてる会社員や内科医も、私は知っています。

人が病にかかる事は
果たして自己責任なんでしょうか。

以前、「代表取締役何とかこーさく」たらいう漫画を読みましたが

「近いうちに亡くなる可能性が高い老人に
『胃ろう』を入れて太らせている日本はおかしい」

というシーンがあって
ああ、この漫画家さんは
現場を知らないのね
と思った事があります。

胃ろうを入れてプクプクになった高齢者を少なくとも私は、見た事がありません。

理由は胃ろうからの流動食は
下痢や嘔吐をしやすく、また、口から食べるカロリーより、はるかに低いし、高カロリーにすると更なる下痢や嘔吐を誘発するからです。

今回の件ですが、ご自分の意見がネットニュースからは削除されても
ご納得がいっていないようにお見受けします。

出来ましたら
ぜひ、人工透析の現場に行って、見て、会話をしてきて欲しいと
私は切望しています。


上京したばかりの頃
透析治療を始めたばっかりの方から
「こんな減塩食、不味くて食べられないよ」
と言われて
同じメニューを特別に作ってもらい
病室で一緒に食べた事があります。

京都出身の私は薄味が平気なのか
本来の味覚オンチのせいか
はたまた貧乏舌のせいか
「…………おかしい…………そんなに不味いと思えないんです」
と言いました。

この方は
「…………そうだねぇ。
こうやって、あなたと一緒に食べてると確かに、そんなに不味くない。
旨いとは認めないけど」
と仰っていました。

病める方の病との孤独な戦いを垣間見た気がしました。

この減塩食も
ぜひ、お試しになってみて下さい。


いつも読んで下さって
ありがとうございます。

ダシとかスパイスとかレモンとか薬味とか
工夫、そして会話を楽しむのが治療食のコツです。