夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

夫婦でおすすめ、横溝正史祭り。

冬の夜長にネタのための本が増えて…………これ全部読めるんかいな(泣)。

そんな千葉県某所から
おこんにちは。

水「最近は『推理小説』そのものに元気がない」

相方「そーねー。リアルに解決が難しい上に、凶悪な事件が多いし」

水「『それはわたしの長い探偵生活で最も恐ろしい事件だった』
みたいな書き出しで、読むと

『ほえ?』

となるようなミステリーが増えたせいもある。

密室のトリックが


『犯人が超能力者で、壁の通り抜けが出来た』


とゆーがあって」

相方「…………ギャグ?」

水「『新・本格派』の作家だったよ。
それと『離島物』で


『犯人は夜中にゴムボートを毎晩膨らまし、冬の日本海を渡って、本土でアリバイ作りをしていた』


てのもあった」

相方「…………冬の日本海なめんなぁああああっっ‼」

水「新しいツールのせいで、昔ながらのトリックが簡単に出来るようになったせいもある」

相方「携帯電話とかパソコンとか」

水「黎明期はまだ、取り込んでやろうという作家さんも多かった。
それが追い越された。
一番大きいのは
『携帯電話でネットが出来るようになった』。

『時刻表ミステリー』
なんかは打撃を受けたと思う。
怪しい犯人、怪しい変装。怪しいアリバイ
これも必要性が減った。
怪しいブツをネットで売り買いも出来るし。
被害者の携帯電話が消失しても
実はメールや電話記録の復元が出来るからねぇ。

『携帯電話でネット』

を取り込めないから
わざとらしく『圏外になっちゃう山間部や孤島』ばっかり」

相方「ラノベのミステリーの方が面白そうではある。若い作家さんなら
そういった新しいツールも上手く活用出来るような」

水「古式ゆかしいが今でも古くなっていないミステリーとして
私は横溝正史先生をおすすめする」

相方「今風にアレンジ出来る作家さんいたら面白いしね」

では夫婦でおすすめ。

犬神家の一族 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

犬神家の一族 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

八つ墓村 (角川文庫)

八つ墓村 (角川文庫)

こちらは欄外。
メジャー過ぎるので読んでなくても内容を知ってる人が多いと思います。


7位「悪魔の手毬唄

悪魔の手毬唄 [DVD]

悪魔の手毬唄 [DVD]

横溝作品の

「死体を何かの見立ててデコレーションする」

という月岡芳年の無残絵の世界観。
これは横溝先生の真骨頂です。
小説より、映画や漫画の方が分かりやすいと思います。

ひなびた村に、スターとなって出世した娘さんが帰ります。
そして、村の若い女性が次々と、伝わる手毬唄になぞらえた死を遂げます。

実は横溝先生、この手毬唄のネタがどこかにないかと、かなり探したそうです。
そして「ないなら、自分で作ろう」と思い、作った……てのは小ネタです。


6位「獄門島

これも「見立て殺人」です。
ただ、動機を見ると
ここまでやらなくても……な感が強く湧きます。

ちなみに市川昆監督の映画では
小説と犯人が違います。
このアレンジは見事でした。

美しいが、どっかヘン、つまり今時のメンヘラ三姉妹が
俳句に即して殺されていきます。
しかも、動機が分からない。

これはホントにもう、ドロドロ過ぎて戦争のせいもあって、皆さん可哀想です。

金田一先生が女性を口説く珍しいシーンがあります。


5位本陣殺人事件

疎開中にプロットを温めていたそうです。
ひじょうにトリッキーな作品です。

旧家で結婚式があり
離れで初夜を迎えた新婚夫婦。
が、翌朝、惨殺されているのが発見されます。

凶器がない。
屏風には謎の三本指の血の手形。
外は積雪なのに足跡がない。

いわゆる密室物です。

ただ、胸くそ悪いお話で
ちょっと、これはひどいなぁと思った作品です(犯人と動機が)。


4位女王蜂

女王蜂【リマスター版】 [DVD]

女王蜂【リマスター版】 [DVD]

富豪の一人娘は美しい上にお年頃。
そろそろ婿取りをする時期に。
ところが、そこへ
彼女の住む月琴島から出すな、出したら死人が出るぞ
と脅迫状が。

この一人娘のお嬢さんは、空かずの離れを開けてしまい、かつて、殺人事件があった事を知っています。

そして本当に
婿候補の一人が殺されて……ラストはありがちですが
「恋愛パワー、ぱねぇ」
と思いました。


3位悪魔が来たりて笛を吹く

映画かドラマ版は
犯人がちょっと違います。

戦後間もなくの「元」貴族。

その当主が
帝銀事件をモチーフにした大量殺人事件の犯人と思われて、しつこい取り調べに合います。そして自殺。

金田一は、この当主の娘が
「父は本当に死んだのか、調べて欲しい。父と同じ顔をした人を見かけた」
という奇妙な依頼を受けます。

この当主は、自分の息子と娘(依頼人)以外の、一族の人間全てを憎んでいたらしく、やがて殺人が。

背徳、禁断、斜陽のお貴族様。

耽美がてんこもり。

それと、横溝作品に多く出てくる

「世間知らず、あるいは幼稚、あるいは純粋なせいで
でっかい子供がいても若い外観を保ってる美貌の女性」

がいますが、それも上手く描写されています。
って言うか、それはアカンやろ、オカン
なお話です。

悪魔が来たりて笛を吹く
は作品の中のオリジナル曲です。
そして、特定の条件で奏でられる曲です。
譜面を載せようとして挫折したそうです。


2位「悪霊島」

悪霊島 [DVD]

悪霊島 [DVD]

悪霊島 (あすかコミックス)

悪霊島 (あすかコミックス)

海で救出された一人の男性が
「鵺(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい……」
という言葉を残して死にます。

事故ではなく殺人らしい……。

平家の血を引くという一族が守る、孤島の神社。

かつて、この島から追われた男性が出世し、島を観光地にすると言って
故郷に錦を飾るためか帰る事になります。

そもそもの発端は
引き裂かれた若い無垢な恋がありました。

そして、この出世した男性が帰って来たばっかりに悲劇の開幕。

「もはや戦後ではない」
という世間の空気を反映してか
テープレコーダーやヒッピーが活躍。
けれど、この島ではまだ古い価値観や因習が根深く残っています。

前述の
「世間知らず他のせいで若い外観なままの美女」
が頑張ってます。

そして、ミステリーで初めて泣いた作品でした。

どうにも救いがなく
何をどうすれば悲劇が防げたのか。
そして守り続けた純愛が悲しいです。

切ないストーリーです。

それと、横溝先生はやっぱりロマンチストで
しかもそれを自覚してたのが分かります。


1位「真珠朗」

真珠郎 (角川文庫 緑 304-16)

真珠郎 (角川文庫 緑 304-16)

金田一耕助TVシリーズ 真珠郎 [DVD]

金田一耕助TVシリーズ 真珠郎 [DVD]

ドラマ化が三回されてます。
一回目の真珠朗を演じたのは
ヒーロー物の女優さんでした。

が、あまりの怪しい美しさに、化粧品のCMオファーが殺到したそうです。

ある目的のために作られ育てられた青年、真珠朗。

そのギリシャ彫刻のような美しさとは裏腹に
中身は嬉々として人を殺す殺人鬼。

大学教授である主人公は
同僚に誘われて、格安避暑旅行に行きます。

そこで大変な事になるのですが、
一体、何のために?
そもそも、彼を育てた人間の目的は何?
と言うか、そもそも、誰がどうやって彼を作ったの?

私としましては
若い頃の美輪明宏先生にぜひ演じて欲しかったです。

その怪しい美貌(妄想での)に、メロメロ。

それと、この作品は戦前の物で
当時の日本のシャレオツが何かとか
ブームとか
チラ見え出来て感慨深いです。
戦後で、この作品の、この空気は書けなかったのではないでしょうか。

惜しむらくは
長いストーリーの割りに
派手さが足りないのか
「祟りじゃあああっっ‼」
みたいなインパクトがないせいか
映画化する強者監督がいません。

そして、真珠朗を演じて欲しい俳優女優もいそうにありません。


問題作
病院坂の首縊りの家

本来、ネガティブな感想は書かないように心掛けていますが
金田一探偵の転機となった作品です。

大長編です。

20年前に起きた凄惨な事件。
同じ場所で似たような事件が。

金田一探偵は何故また、ここで?
と思いつつ推理開始。

映画も観ましたが


めっちゃ分かりにくい!


登場人物が多い上に、その関係性が複雑過ぎ!

正妻の娘と従姉妹と愛人の娘と……えーと。

そしてトリックが古い!

何よりも、金田一探偵自身が
自分の探偵稼業はもう古くなっている事を分かっています。

世間では劇場型犯罪が多発。
未成年による、これといった動機なき犯罪や
通り魔のような「推理」など必要としない犯罪ばかり。

何よりも、あの悲惨な戦争を経ても変わらない人間の業の深さ。

この事件の後、金田一探偵はふらりと渡米し、帰る事はありませんでした。

その「オワコン化」してしまった自分をセルフパロディーしたのが
金田一耕助の冒険」
です。

金田一耕助の冒険 廉価(期間限定) [DVD]

金田一耕助の冒険 廉価(期間限定) [DVD]

金田一耕助の冒険

金田一耕助の冒険

犯罪が近代化し、科学捜査も進化。
刑事達はやたらと太陽に向かって吠えたがる(でなきゃ必要もないのに走る)。
狭い村でのドロドロの対人関係も希薄になった昨今。

昔ながらの探偵の仕事を求めて彷徨う金田一探偵。

そこには事件が!……あれ、ない?

これは映画のラストは涙なくしては見れません。

明智小五郎のように
初期は袴にクラッシャーハットと
金田一と変わらん姿だったのに
途中でバージョンアップ、
パリッとスーツに少年探偵団を従えて颯爽と…………というような事が出来なかった実直で不器用な金田一耕助探偵を
私はこれからも愛するでしょう。


いつも読んで下さって
ありがとうございます。


金田一耕助探偵の
デジタルリマスター版の小説を
誰か書いてくれないかと熱望してます。