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夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

下山事件~6.死体は語る~

注※そのものの写真はありませんが
遺体発見時現場の略図と文章に
具体的な描写があります。
耐性のない方はご注意下さい。


水「『死体は語る』んですよね」

医師「ああ、東京監察医務院の上野正彦先生のベストセラー」

水「学校の文化祭にも、特別講演でいらっしゃいました。
スライドもふんだんで、凄かったです」

医師「確かに、すごい文化祭だ」

水「遺体には必ず、死に至った痕跡が残ります。
どんなに偽装しても、です。

下山総裁の遺体は
監察医の八十島先生が一番に見ていますが
検分はされていても司法解剖はされていません。
東京医学部の古畑教授がされています。
後に慶應大と論争みたいになりますが
慶應大は司法解剖には関わってません」

医師「『報告書』や『所見』は
後で誰が見ても分かるように、具体的かつ細かく書くのだけど、その点は古畑教授は信頼出来ると思う」

水「問題は、この『所見』で何故に『死後轢断』になったかですね。

ヒトは生きている限り、致命傷を負っても体を修復させようとします。
それが『生体反応』ですが
古畑教授は『生体反応・なし』
とされています。

ただ、轢断された遺体の生活反応ですが…………これは探す方が難しいんではないかと思うんです」


注※遺体発見現場略図







f:id:slowstudy:20170208201937j:plain

医師「バラバラではある」

水「現代の『電車』であったら、もっと細かくなってしまうと思います。

首は切断されてますが、頭全体を覆うマスクを外したように
顔面が剥がれて
下を向いた形で落ちています。
顎もバラバラに分散されています。

胴体ですが、こちらが写真です。
(お見せ出来ません)

骨盤の上辺りから180℃左に捻ったように下半身が曲がっています。
右腕、両足首切断。

衣類はほとんど剥がれて、半裸の状態です。

列車に衝突し、車輪などに巻き込まれた衝撃の強さがよく分かります」

医師「これは?」

f:id:slowstudy:20170208203233j:plain

水「物議を醸し出した、両手の内出血です。
他にも眼窩の奥、陰のうと陰茎に内出血がありました。

三菱の貸金庫の他に
その……まあ、奥様以外の……」

医師「なんで急に歯切れが悪くなる」

水「えーと……。奥様以外の女性ともお付き合いなさっていて
この方は有夫なんですが
今で言う『W不倫』などではなく。

『浮気は男の甲斐性』と言いますが
浮気そのものがすごいんじゃなくて
イマドキの不倫は、お手当ても出さずに拘束して、相手女性の若さや時間を奪いますよね。

この時代の男性は
『相手女性がゆくゆく自立出来るように』
出資と言うか、きちんとお金を払って生活費を出したり、自営業をさせてる男性が多かったんです。

で、総裁もそうで。
この相手女性もかなり調べられたそうですが。

貸金庫の件も、この女性も
事件とは無関係だと」

医師「貸金庫に、いわゆる『妾』『2号さん』と来れば、マスコミに餌を撒いてるようなモンだね」

水「そこなんです‼
この思わせ振りな、二つのキーワード、貸金庫と2号女性が出てきて
ますます『他殺説』が燃え上がります。
あんだけ目撃情報があったのに!」

医師「これは?」

水「司法解剖結果の、頭骸骨の図です」


医師「傷は多いが致命的ではない」

医師「要するに『殺人』と思える刺傷や絞殺、打撲傷などがない」

水「そうです!

古畑教授は筋肉中の乳酸量とPH値の変化を測定し
出血量が遺体と現場には少なかったので
『死後轢断』
としています。

慶應大の中館教授は
この乳酸量云々の方法に疑問を呈しています。

そこで出たのが




『血抜き』

『金的』





です」

医師「……確かにアクロバティックだ」

水「他の場所で血液を抜かれて線路に置いた。だから、右腕が切断されてる。

…………めんどくさくありません?
それより、列車にかなり大量の血痕が付いてました。

次は
陰のうと陰茎、『タマとサオ』の内出血は」

医師「そういうボキャブラリーを使うのは止めなさい(泣)」

水「股間を強く蹴りあげられた。
それでショック死。

しかも
『こうした殺害方法は日本人ではなく、外国人に違いない』
とまで仰ってます」

医師「ものすごい偏見だな。
陰のうと陰茎の内出血だけど、現在では轢死体に多く出る所見なんだ。
理由は諸説あるが」

水「骨がない軟部組織ですからね。

体に強い衝撃や圧迫が加わると
末端の毛細血管に負荷がかかり、内出血を起こす。
両腕の内出血斑も、それで説明がつきます。

この当時は、列車事故が今ほど多くなかったのと
ここまで微細に調べられなかったんでしょうか」

医師「多分。しかし……『血抜き』や『金的のショック死』や、それこそ推理小説みたいな」

水「どうしても、なにがなんでも、『他殺』にしなくてはならない理由があったんだと思います」

医師「……『レッドパージ』か」



水「赤狩り、ですよね。明らかに。

『総裁は、左翼や共産党国鉄労組の人間に殺されたらしい。
共産主義って恐ろしい』

と大衆を誘導。

多分、GHQが日本政府に、そうするように働きかけた。

大規模なリストラをしなくちゃいけないし、これからも東アジアの軍需工場として、国民には
文句も言わずに働いてもらわなくてはならない。

『労働者の権利』なんて、邪魔」


医師「…………君が行方不明になったら、どうしよう」

水「イマドキの日本で、共産主義を怖がってる人がいるほど、リベラルは力ないですよ。

ところが、これが思わぬ方向へ」

医師「裏目に出た」

水「はい。

『下山総裁は、GHQやキャノン機関やらに謀殺された』

という記事が、
左翼や共産党国鉄労組・犯人説
より爆発的に燃え上がってしまったのです」

死体は語る (文春文庫)

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監察医が泣いた死体の再鑑定:2度は殺させない

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死体は語る現場は語る

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ザ・モルグ 1: CASE1 「溺死体」、CASE2 「変死体」

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ザ・モルグ3: CASE4「虐待死」、CASE5「自殺死体」

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