夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

「黒い」手塚治虫。

皆様、お久しぶりです。

調べものや資料の中で埋もれながら
ゲームをやったり寝ていたり牛丼食べたりしていました。

賢明なる読者諸兄は
こんな大人&オバハンになってはいけません。

長らく電子書籍化されてなかった
手塚治虫全集がKindleで読めるようになりました。

電子書籍化の何が助かるかと言いますと
手塚治虫全集の数がハンパないので
場所を取らないのが助かるのです。

それで分かったのですが
まだまだ読んでない手塚作品がたくさんあるという喜びでした。

何かと言えばヒューマニズム代表にされる手塚先生が
学生運動真っ盛りの頃に
そうしたムーブメントをどう見ていたか分かる作品もあります。

例えるならば
「人間のネガティブな部分をも描く手塚先生」。

以下はおすすめです。

奇子

奇子 1

奇子 1

奇子 2

奇子 2

手塚先生が言う「昭和三部作」の1つです。
豪農の一族があり、その家庭内はグッチャグチャ。

その一族に産まれた奇子
豪農&旧体制な家庭内のグッチャグチャのせいで
大きくなるまで幽閉されます。

そして、やっと外に出られたのですが
田舎を出たら街は近代化。
付いていけるの、これ?
な毎日。

何しろ長年の幽閉のせいで、性的価値観やらいろいろ、奇子はズレてます。

変わり行く社会と、その中で人生を営むヒトとは何ぞや
という重いテーマ……なのは良いんですが、ぶっちゃけ、絵とテーマがあんまり合ってないんですよ。

手塚先生のかわゆい女の子キャラが
ドロドロの横溝正史もかくや、の世界観の中にいるのが
余計にテーマを重くしてるのと
かえって奇子がエロい事になってます。


「サスピション」

サスピション

サスピション

短編集です。
昭和40年代の真ん中あたりから
少年誌だけでなく、青年誌へも作品を発表し始めて、その完成度やストーリーテラーとしての手塚治虫
再発見出来ます。

魔夜峰夫氏の「パタリロ!」が
何であんなにバラエティー豊かな内容になったかと言うと

「誰もまだ描いてないジャンルを探したら
どのジャンルも手塚先生が
既に作品を発表されていた。
BLでさえも!」

と仰ってました。

ホントにその通りです。

サスペンス色の強い作品ばっかりですが
手塚先生…………むっちゃSFを読み倒してらっしゃいます。

驚いたのは
セカイ系すらも、すでに描かれてます。


「時計仕掛けのりんご」

とある地方都市の住民に
服従しやすくなる薬をあらゆる方法で投与。

クーデターを企む軍人の一味が街を制圧し、ゆくゆくは国会も手中に納めて
国家を変えるぞ!

クーデター?カルト?

…………手塚先生は預言者でもあったのかもしれません。

オチがすごいです。

しばらく、呆然としました。


「火の山」

火の山

火の山


イチオシです。

他はいいですから
これだけでもお読み下さい。

冒頭の
ペーター・キュルテンの記録
という実在の殺人鬼の物語が
ひっじょうに泣けます。

本能のままに女性を襲い殺していた男。
けれど、奥さんだけは
静かに深く愛していた…………こうした殺人鬼には珍しいケースです(多分)。

過去に傷を持つ(経歴として)奥さんと出会い、アプローチしてプロポーズして結婚して
近所では文句なしのオシドリ夫婦。
加えて、男は働き者で奥さんを大切に大切にしています。

毎日、奥さんの勤め先にお迎えに行って
時々はレストランで食事し、ダンスもする。

殺さないと満足出来ない男が
何故にこんなに奥さんには一途だったのか。

この悲壮な愛の物語が
素晴らしい!です。

これは手塚先生にしか書けないストーリーです。
同じ題材でも、他の作家では
このメロウな、それでいて、どこか醒めた視線の主人公は書けないと思います。

それまで女なんて欲望のはけ口でしかなかったのに
生まれて初めて、人を愛し、愛された殺人鬼。
生まれて初めて、幸せにしてあげたいと思った女性と
結婚した殺人鬼。

最後は悲しみだけが残りますが
主人公の
どこかしら乾いた自分自身への諦め。

そして、奥さんへの
優しい優しい思いやりのある言葉。


「元気でな。愛してるよ」


号泣。

「結局、こんな風にしか生きられなかったオレを
許してくれなくてもいいよ」

というような…………本なら「行間」なんですが
手塚先生の作品には
そうした

「読者が、ついつい、付け足したくなるエピソード」

を喚起させる物があります。

二次創作はあくまでも「作品への愛や思い入れ」が作らせるのですが
手塚作品は

勝手に「その後」とか、脳内が動いてしま~う!

とは言え
「ヤング・ブラックジャック
では
イケメン・ブラックジャック
美しく


脱いで脱いで脱ぎまくってるのを


天国から困り顔で笑ってらっしゃるのが見えるようです。


いつも読んで下さって
ありがとうございます。


全巻、制覇します。