あなたが王や姫になる方法~タニス・リー他~
皆様、おこんにちは。
便秘で腰が痛いです。
まあ、妊娠してるのと同じなのか(多分、違う)。
「プライドを満たす」のと「他人に褒められたい」のと「自分を大切にする」という事は、似ていてビミョーに違います。
その違いが分かってなかったりする人もたくさんいます。
若い頃に読んで
「ああ、これがその真の意味なんだ」
と痛感させられた本をご紹介。
「銀色の恋人」
- 作者: タニスリー,Tanith Lee,井辻朱美
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 17回
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SFのカテゴリーに入ります。
近未来のお話です。
富裕層の母親と暮らす主人公の女の子は自我がなく、何でもママの言いなりです。
そして、友人宅のパーティーで
最新型の男性型ロボット(つーか、アンドロイド)の「シルバー」と出会い、恋に落ちます。
何だかんだで、シルバーを連れて駆け落ちします。
格差があり得んくらい開いてる世界で、庶民はド貧乏してるのですが、そこへ逃げます。
それまで何不自由なく暮らしていた主人公は
シルバーの助けもあって、ド貧乏な生活でもサバイバル、自立していきます。
この主人公は典型的な「お嬢さん」なんですが、自分を語る言葉を持っていなかったせいで、少し変わってます(エキセントリックと言うか)。
が、初めての恋と愛を知ったせいで、自我に目覚めます。
ボロアパートの壁を綺麗に塗り直し、カーテンや絨毯の見本の端切れでタペストリーを作って飾り、リサイクル屋で買った洋服を直し、メイクも覚えます。
それまでは、ぜーんぶママが与えてくれていた物でした。
が、精神的に自立するにあたって
自分は彼女がママの望む方向とは違っているけど実は
美しいのが分かります。
このシルバーとの手間のかかった、しかし、楽しそうな生活が微笑ましいです。
シルバーはシルバーで、最初はいかにも機械な反応をしてますが、喧嘩なんかも含めて豊かな精神を獲得。
愛を覚えていきます。
このシルバーが主人公に全てを捧げる姿と言葉が美しく、二人は歌う事でお金を稼ぐようになるのですが…………ありがちな設定なのに、涙なくしては読めないストーリーです。
この主人公の自立へのプロセスをぜひ、お読み下さい。
「銀色の愛再び」
- 作者: タニスリー,Tanith Lee,井辻朱美
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/05
- メディア: 文庫
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「銀色の恋人」から後の時代。
主人公はイマドキ風のビッチ少女です。
狂信的な院長の支配する孤児院から逃げ出して、ハウスキーパーの仕事をして
頑張って一人で生きています。
そんな主人公を支えているのは
昔、偶然に見付けた「銀色の恋人」という本。
自分には、こんな清らかな恋をする資格はないと思いつつ、忘れられません。
そして、シティではシルバーと同じタイプの新製品のお披露目があると知り、出かけて行きます。
製作会社の一員からパーティーに誘われて、シルバーと(似たアンドロイド)対面。
「汎用人型創作決戦機械」と言うか、芸術的な要素に特化して作られているシルバー改。
ところが大事件が起こります。
「ロボット三原則」から完全に外れて、このアンドロイド・シリーズが人間を殺します。
訳が分からないまま、シルバーと一緒にいる事になった主人公。
「銀色の恋人」とは違い、現代的で口も悪いし、何より思った事をそのまま言葉にするタイプの主人公ですが
シルバーは彼女が、ひじょうに孤独で、その孤独ゆえに秘めた優しさを持っているのを見抜いています。
この辺りの駆け引きはともかく。
主人公が子供の頃から、頑張って働き、人生や自分に未来はないと絶望しつつも
どんな風に自分の部屋を作り上げているのかが見ものです。
部屋って、その人の人格の一部が表れます。
しかし、シルバー達のアンドロイド・グループはどんどん有害になっていきます。
勝ち気を装っている主人公に、本来は
機械であるシルバーが
どう愛を教えるか。
「銀色の恋人」のキャラも出てきます。
「パラディス・シリーズ」
- 作者: タニス・リー,市田泉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2014/09/29
- メディア: 文庫
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- 作者: タニス・リー,市田泉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2014/08/21
- メディア: 文庫
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- 作者: タニス・リー,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2015/01/10
- メディア: 文庫
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タニス・リーばっかりだなぁ。
すみません。
過去と未来が不思議に交錯した、背徳と退廃の都・パラディス。
ここに住う人達は、いろいろですが
すっごい独創的な生活をしてます。
未来世界の画家や、19世紀末っぽい過去の貧乏メイドや、魔法で男から女に変わったお貴族樣と
本当に盛りだくさん。
そのそれぞれが、自分の流儀で仕事を選び、稼ぎ、部屋を飾り、他人に理解されなくても、自分にとって居心地の良い生活をしてます。
例えば、月収10万円で、四畳半のボロいアパートに住んでいたとします。
壁紙を張り替えて、あるいはペンキを塗り、カーテンを作って掛けて
古道具屋で自分の気に入った物だけ買い、それを丁寧に飾り
自分で作った黒いドレスを着て
100円ショップのクラシックのCDを流し
手間暇かけて作ったフルコースを
やっぱり古道具屋で安く買った銀食器で一人で食べる…………いるんです、たまにこういう、一人でゴージャスに暮らせる人が。
「工夫が出来る人」
だけでは片付けられない、「自分の美学」を持っている人。
ボロは着てても心は錦、武士は食わねど高楊枝。
あなたの人生は
あなたを中心に回ってるから。
「ずっとお城で暮らしてる」
- 作者: シャーリィジャクスン,Shirley Jackson,市田泉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/08/01
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やっぱりアメリカには敵わないかもしれません。
メアリー・キャサリンこと、メリキャットは
お姉さんと、老いた叔父さんとの三人暮らし。
大きな屋敷に住んでます。
しかし、この三人は、街の人達から憎まれたり嫌われたりしています。
何故なら、数年前に、メリキャットの両親と叔父さんの奥さん、そしてメリキャットの弟が
一斉に毒殺されたから。
犯人は誰だか分からないまま。
お姉さんは家事と畑仕事が得意で
老いた叔父さんの介護をしています。
叔父さんは、この事件の真相を解明すべく、いろいろ調べていますが、いかんせん、車椅子生活。
メリキャットは、この閉じた生活を守るために屋敷のあちこちに、自己流の魔法をかけています。
そこへ従兄がやってきて、ややこしい事になります。
世間は第二次世界大戦が終わった解放感で新しい物が一杯。
なのに、三人は頑なにオールド・スタイルな生活を守っています。
古いドレスに、皮のハーフブーツ。
オカンの形見のジュエリー達。
買う事が主流になっている料理やスイーツ類を手作りし、たまに図書館で古い本を借りる日々。
テレビもラジオも関係ないし。
従兄のせいで「新しい世界と生活に向かおう」って?
そんなん嫌だぁ‼
静かなようでいて、怒濤のストーリー展開。
こういう「閉じた世界」がモチーフの場合、狂気でしか救いがないお話が多いのですが、三人は狂う事はありません。
少しネタバレしますが、幸せになります。
まあ…………元々、おかしいのかもしれません。
家事に介護に畑仕事にと
ひたすら働くお姉さんが健気です。
狂気という、ありがちなオチではなく
どうやって幸せになるのかは
ぜひお読み下さい。
一方で「閉じた世界」が嫌いな人も多いです。
とにかく、何でも良いから
武勇伝やら自慢話を盛って盛って盛りまくり
時には大嘘もつき
褒められたり尊敬されたりしたい、そうした欲求の行き先は
たいていが詐欺師か孤独です。
そこに至る心理的なプロセスは
いつかまた。
いつも読んで下さって
ありがとうございます。
子供の頃に
よく「お仕置き」で押し入れに閉じ込められたりしましたが
たいてい中でスヤスヤ寝ていたそうです。
暗闇は恐くないの♪
水