夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

あなたが王や姫になる方法~タニス・リー他~

皆様、おこんにちは。


便秘で腰が痛いです。

まあ、妊娠してるのと同じなのか(多分、違う)。


「プライドを満たす」のと「他人に褒められたい」のと「自分を大切にする」という事は、似ていてビミョーに違います。
その違いが分かってなかったりする人もたくさんいます。

若い頃に読んで
「ああ、これがその真の意味なんだ」
と痛感させられた本をご紹介。


「銀色の恋人」

銀色の恋人 (ハヤカワ文庫SF)

銀色の恋人 (ハヤカワ文庫SF)

SFのカテゴリーに入ります。
近未来のお話です。

富裕層の母親と暮らす主人公の女の子は自我がなく、何でもママの言いなりです。

そして、友人宅のパーティーで
最新型の男性型ロボット(つーか、アンドロイド)の「シルバー」と出会い、恋に落ちます。

何だかんだで、シルバーを連れて駆け落ちします。

格差があり得んくらい開いてる世界で、庶民はド貧乏してるのですが、そこへ逃げます。
それまで何不自由なく暮らしていた主人公は
シルバーの助けもあって、ド貧乏な生活でもサバイバル、自立していきます。

この主人公は典型的な「お嬢さん」なんですが、自分を語る言葉を持っていなかったせいで、少し変わってます(エキセントリックと言うか)。
が、初めての恋と愛を知ったせいで、自我に目覚めます。

ボロアパートの壁を綺麗に塗り直し、カーテンや絨毯の見本の端切れでタペストリーを作って飾り、リサイクル屋で買った洋服を直し、メイクも覚えます。

それまでは、ぜーんぶママが与えてくれていた物でした。
が、精神的に自立するにあたって
自分は彼女がママの望む方向とは違っているけど実は
美しいのが分かります。

このシルバーとの手間のかかった、しかし、楽しそうな生活が微笑ましいです。
シルバーはシルバーで、最初はいかにも機械な反応をしてますが、喧嘩なんかも含めて豊かな精神を獲得。
愛を覚えていきます。

このシルバーが主人公に全てを捧げる姿と言葉が美しく、二人は歌う事でお金を稼ぐようになるのですが…………ありがちな設定なのに、涙なくしては読めないストーリーです。

この主人公の自立へのプロセスをぜひ、お読み下さい。


「銀色の愛再び」

銀色の愛ふたたび (ハヤカワ文庫SF)

銀色の愛ふたたび (ハヤカワ文庫SF)

「銀色の恋人」から後の時代。

主人公はイマドキ風のビッチ少女です。
狂信的な院長の支配する孤児院から逃げ出して、ハウスキーパーの仕事をして
頑張って一人で生きています。

そんな主人公を支えているのは
昔、偶然に見付けた「銀色の恋人」という本。

自分には、こんな清らかな恋をする資格はないと思いつつ、忘れられません。
そして、シティではシルバーと同じタイプの新製品のお披露目があると知り、出かけて行きます。

製作会社の一員からパーティーに誘われて、シルバーと(似たアンドロイド)対面。
「汎用人型創作決戦機械」と言うか、芸術的な要素に特化して作られているシルバー改。

ところが大事件が起こります。
ロボット三原則」から完全に外れて、このアンドロイド・シリーズが人間を殺します。

訳が分からないまま、シルバーと一緒にいる事になった主人公。

「銀色の恋人」とは違い、現代的で口も悪いし、何より思った事をそのまま言葉にするタイプの主人公ですが
シルバーは彼女が、ひじょうに孤独で、その孤独ゆえに秘めた優しさを持っているのを見抜いています。

この辺りの駆け引きはともかく。
主人公が子供の頃から、頑張って働き、人生や自分に未来はないと絶望しつつも
どんな風に自分の部屋を作り上げているのかが見ものです。

部屋って、その人の人格の一部が表れます。

しかし、シルバー達のアンドロイド・グループはどんどん有害になっていきます。

勝ち気を装っている主人公に、本来は
機械であるシルバーが
どう愛を教えるか。

「銀色の恋人」のキャラも出てきます。


「パラディス・シリーズ」

タニス・リーばっかりだなぁ。
すみません。

過去と未来が不思議に交錯した、背徳と退廃の都・パラディス。

ここに住う人達は、いろいろですが
すっごい独創的な生活をしてます。

未来世界の画家や、19世紀末っぽい過去の貧乏メイドや、魔法で男から女に変わったお貴族樣と
本当に盛りだくさん。

そのそれぞれが、自分の流儀で仕事を選び、稼ぎ、部屋を飾り、他人に理解されなくても、自分にとって居心地の良い生活をしてます。

例えば、月収10万円で、四畳半のボロいアパートに住んでいたとします。

壁紙を張り替えて、あるいはペンキを塗り、カーテンを作って掛けて
古道具屋で自分の気に入った物だけ買い、それを丁寧に飾り
自分で作った黒いドレスを着て
100円ショップのクラシックのCDを流し
手間暇かけて作ったフルコースを
やっぱり古道具屋で安く買った銀食器で一人で食べる…………いるんです、たまにこういう、一人でゴージャスに暮らせる人が。

「工夫が出来る人」
だけでは片付けられない、「自分の美学」を持っている人。

ボロは着てても心は錦、武士は食わねど高楊枝。

あなたの人生は
あなたを中心に回ってるから。


「ずっとお城で暮らしてる」

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

これが書かれたのが、1940年代、てところに私は深く驚きました。

やっぱりアメリカには敵わないかもしれません。

メアリー・キャサリンこと、メリキャットは
お姉さんと、老いた叔父さんとの三人暮らし。

大きな屋敷に住んでます。
しかし、この三人は、街の人達から憎まれたり嫌われたりしています。
何故なら、数年前に、メリキャットの両親と叔父さんの奥さん、そしてメリキャットの弟が
一斉に毒殺されたから。

犯人は誰だか分からないまま。

お姉さんは家事と畑仕事が得意で
老いた叔父さんの介護をしています。

叔父さんは、この事件の真相を解明すべく、いろいろ調べていますが、いかんせん、車椅子生活。

メリキャットは、この閉じた生活を守るために屋敷のあちこちに、自己流の魔法をかけています。

そこへ従兄がやってきて、ややこしい事になります。

世間は第二次世界大戦が終わった解放感で新しい物が一杯。
なのに、三人は頑なにオールド・スタイルな生活を守っています。

古いドレスに、皮のハーフブーツ。
オカンの形見のジュエリー達。
買う事が主流になっている料理やスイーツ類を手作りし、たまに図書館で古い本を借りる日々。

テレビもラジオも関係ないし。

従兄のせいで「新しい世界と生活に向かおう」って?
そんなん嫌だぁ‼

静かなようでいて、怒濤のストーリー展開。

こういう「閉じた世界」がモチーフの場合、狂気でしか救いがないお話が多いのですが、三人は狂う事はありません。

少しネタバレしますが、幸せになります。

まあ…………元々、おかしいのかもしれません。
家事に介護に畑仕事にと
ひたすら働くお姉さんが健気です。

狂気という、ありがちなオチではなく
どうやって幸せになるのかは
ぜひお読み下さい。

一方で「閉じた世界」が嫌いな人も多いです。
とにかく、何でも良いから
武勇伝やら自慢話を盛って盛って盛りまくり
時には大嘘もつき
褒められたり尊敬されたりしたい、そうした欲求の行き先は
たいていが詐欺師か孤独です。

そこに至る心理的なプロセスは
いつかまた。


いつも読んで下さって
ありがとうございます。


子供の頃に
よく「お仕置き」で押し入れに閉じ込められたりしましたが
たいてい中でスヤスヤ寝ていたそうです。

暗闇は恐くないの♪