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地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

絵で分析する犯罪者の心理。

皆さま、おこんばんは。

心理分析や、何らかの心の病や
あるいは性的虐待を受けてるとおぼしき人へのアプローチとして
「絵を描いてもらう」
ことが臨床では多いです。

性的虐待の場合など、口では言えない事も、絵では雄弁だったりします。

問題は判断が難しく
「こういう絵を描いたら異常」
と言えない物があります。
当たり前ですが、内面の描写だけでなく、その表現の力量や
普段から書き慣れてるか、絵画に興味があるかなどでも
絵が変わってきます。

けれど「お題」を出して描いてもらい
誰が描いたのか教えず一般人に見てもらうと
思いもよらない分析が出てきたりします。

よくやるのが「バームテスト」です。

「樹を描いて下さい」

というヤツです。

これは一般にも広く知られているので割愛します。

次は
「風景を描いて下さい」というお題です。

これはこちらから注文します。
「山、海、河、道路、田、家、人物、動物を織り混ぜて描いて下さい。全部書かなくても構いません」
とちょっと難易度高め。

見る項目は
「取り組む姿勢」も1つにあります。
嫌そうだったり、めんどくさそうか、真剣か。
制限時間一杯使うか、などです。

それで出来上がった絵を見て分析します。

私の描いた絵。
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分析。

真面目に取り組むが、カラーで描くのを拒否する。
その分、時間が取られるからとの事であるが、色を使う事に不安がある様子。

全体的に賑やかな絵。
道路に車など割りと細かい。
それなりに豊かな経験と空想世界を持っている事が窺える。
表現したい事が多い様子。

カラーを拒否する点から、どうしても吐露できない物がある。
あるいはどこか貧弱なのかもしれない。
全体的に柔らかい線で描かれていが、人物が固い。


豊かな樹。しかし半分。
隠したい部分があり、社会的には、精神的に豊かなように見せているのかもしれない。


古い屋根の瓦の欠けた家。
幼少期に家庭が安定していなかったか象徴。


真ん中の井戸。
釣瓶もなくヒモで汲むアナログさ。
水は深層心理の表れでもあるが、深い所に、他者へは見せたくない何かがあるか。
海にも魚か何かいる。


太陽と昼の月。
多重人格の場合は「太陽を2つ」描いたりするが、これは少ないケース。
本人は自身の二面性を自覚している。


山、海、道路の配置が微妙におかしい。
生き辛さが多少、ある。


井戸の近くの田。
こういう「家庭菜園」的に描くのは少ない。
自立心の表れ。ただし弱い。


花を持つ、顔が分からない女性。
家の中で家事らしき事をしている、やはり顔の分からない女性。
上半身裸でバケツを持つ、無表情の少年。

「こうありたい大人の女性」のロールモデルを、持たないまま生きてきたのではないか。
あるいは、こうなりたい大人の女性が周りに存在しなかったのか。

少年は子供らしさを奪われている。
井戸から水を汲むバケツを持っているのは、「労働」を意味している感じがする。
幼少期から子供らしさを奪われた本人の投影か。

また、人物の動きに躍動感がなく、困難が起こった時に、本人がどう振る舞って来たのかが垣間見える。


本人の願望として
「年相応の成熟した人間」に見せたいが、かなり幼さが表れている。
特定の場所だけ、時間をかけて描いているのは、その部分へのこだわり、あるいは成熟を意味している。
反面、意識的に成熟を拒んでいる部分が見受けられる。


人物が多いのに、本人が描かれていない。
本人の好きなホラー映画のキャラクターを描いているが(子供はアニメキャラなどを描く事が多い)、幼さの表れ。
また、自身の存在の否定と、他者へどう振る舞って良いのか分からない困惑が伝わる。


て言うか、貞子とか井戸とかトシオとかカヤコとか描くな。


さて、まずは下記をご覧下さい。
とある有名犯罪者の絵です。
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まずは先入観なしにご覧下さい。

この絵を描いた時には30代後半以降。
なのに、何だか絵が子供っぽいです。

精神鑑定では、先に川を前に大きく書いてしまったので、それぞれの配置やパースがおかしく、遠近間がありません。

また、動物が描かれていますが、犬か猫かも分かりません。

IQですが「正常だが低い」とありました。
数値は、基準がよく変わるのと、差別予防のためか、はっきり明言されていません。
が、学校での成績は低く、集中力の欠如が度々、教師から両親へ指摘されていました。

「異常さ」は感じませんが、自我の現れである木も大雑把で
自我の弱さや、他人との関係の希薄さが表れています。

この犯罪者は
ロールシャッハ・テストで
特定の絵に拒否反応を示しています。

この絵。
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ロールシャッハ・テストは
かなりの数の絵を見て、その印象や何に見えるのかを話してもらいます。

つまり、結構、疲れるのです。

実は、この絵はロールシャッハ・テスト内で


息抜き


の要素を含んだ絵です。

単色で複雑さもないし
私だったら
「蝶」
と答えて終わりでしょう。

拒否を示すとは、例えば、答えを言いよどんだり
嫌そうな表情をしたり
チラッと見ただけで、分からないと速答したりなどなどです。
どんな拒否反応を示したのかは分かりませんが
この絵が一体、何に見えたのでしょう。

上記の絵を描き、ロールシャッハ・テストでこの絵に拒否を示したのは











池田小児童殺傷事件の
宅間守
です。


それを踏まえた上で見直すと
また違った分析が出てきます。

有名犯罪者の精神鑑定の時

「いかにも禍々しい」

という絵を描く人は以外と少なく
だから余計に、はっきりとその人格の一端が見えたりもします。

私が上記の絵で
まるで「人面犬」みたいな動物が
微妙に宅間守に似ているな
と思った事でした。

破壊衝動が強い、社会への不満が爆発寸前、という人の場合
何かしらの表現をすると上手くバランスが取れるようになる事が多いです。


宅間の絵を見る限りでは
本当は
「知的レベルも社会的地位も高い、ハイスペックな人間」
になりたかったのに、どうしてもこの世界に居場所が見付からない、弱い自分を正面から対峙していないフラストレーションをうっすらと感じます。


自分と向き合うのには、別に絵でなくとも、パフォーマンスやお笑いでも良いのですが
突き詰めていくと「向き合う」時期が嫌でも来ます。

これも、何らかの創作活動で消化出来やすいのですが
そもそも、ヒトには
「パフォーマンスをしたい本能」
があるのかもしれません。
それがなかった事と、社会的にむやみに上昇指向が強かったのが
やはり問題だったのでしょう。


天災などでPTSDを負った子供に絵を描かせる場合、描かせっぱなしではなく
後のケアが必要です。

さて、皆さんは、これらの絵にどのような印象を持たれたでしょうか。

あるいはお題に沿って絵を描いて見ると
違う自分が見つかるかもしれません。

それにしても、「先入観」てのは怖くて
誰が描いたのか、あらかじめ知った上で絵を見せると
ホラーな感想しか出て来ません。
特定の人を深く知りたいとか
人間の持つ欲望の源泉を知りたい、てのは、やっぱり「自分を知りたい」の裏返しなのでしょう。


『宅間守 精神鑑定書』を読む (飢餓陣営せれくしょん)

『宅間守 精神鑑定書』を読む (飢餓陣営せれくしょん)


いつも読んで下さって
ありがとうございます。

事件の被害者と遺族、心や体に傷をを負った方、心より安らかなら日が来るように祈っています。