夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

保毛尾田保毛男が好きだった。

今更ながら、すみません。

皆さま、おこんばんは。

とんねるずの番組の30周年記念で
最初は「笑っていいとも」のパロディーとゆーか、本物と同じセットを作り、歌い踊る、とんねるず

ゲストのタモリ氏が

「何なの、これ」

と言った気持ちが分かります。

何がやりたかったのか、よく分からないです。

それはともかく(何がだ)、あちこちでバッシングされてる「保毛尾田保毛男」ですが
リアルタイムで見ていた時、私は好きでした。
シリーズで続いてましたが
ストーリーが良かったからです。

うろ覚えです。

石橋貴明演じる、保毛男は役所勤めで
姉(岸田京子・故人)と二人暮らし。
お金持ちです。

早くに両親を亡くし、保毛男のために姉は婚期を逃しています。

実際にこういう姉弟は結構、いらっしゃいます。

保毛男は、姉が「あなたはホモ(現在は差別用語ですが、バブル期は適当でした)なの⁉」
と詰問すると、毎回、真っ青になりガクガク震えて答えない保毛男。

「違う」と答えれば、姉は安心するのに、それを言わないし、逆に「実はそうです」とも言わない何かの理由がありそうな、なさそうな。

二人は共依存を越えて
「精神的に双子」
になりかかってます。

しかし、姉には好きな男性が。
亡くなった父親にそっくりな男性です(木梨憲武氏)。

姉は弟が同性愛者ではないか気が気ではないし
弟は姉の恋愛が嫌。

共依存のうちはともかく、精神的双子に突入してしまうと
引き離した場合、二人して発狂する可能性があります。
姉の恋愛は、それをどこかで止めようとするブレーキが
本能的に働いたのかもしれません。

そして保毛男が自分のセクシャリティーをはっきり言わないのは
何もかも姉に委ねる事は
自我の喪失だからかもしれません。
心配されているうちは、姉と弟の仲は強固のままでいられます。

保毛男の「ありそうでなさそうな」おネエな演技、そして、姉とのコミカルな日々が続きます。

姉が自分から離れていく事を嫌がる保毛男。

壮絶な姉弟バトルを経て
やがて別れの時が来ます。

保毛男の勤める役所に
姉が恋人と、婚姻届を貰いに来ます。

控えめに、けれど優しく二人を祝福する保毛男。

そして結婚式当日。

花嫁となった姉のブーケトスを受け取る保毛男。

周りから「ホモのくせに!」と言われて「うちの弟はホモじゃない!」とキレる花嫁姿の姉。
しかし、保毛男は笑顔のままです。

結局、最後まで保毛男が、真の同性愛者かどうかは、姉にも分からないまま終わります。

一人の人間のアイデンティティと、共依存からの再生といった深いテーマで

「保毛男が同性愛者であってもなくても、保毛男は保毛男。
姉想いの優しい保毛男。
それでいいじゃないか」

と思わせるラストでした。


「この世の全てはパロディーなのか」
と歌ったとんねるず

私は違うと思います。

パロディーとは
本来なら、権力者に楯突くための笑いの芸です。


チャップリンの「独裁者」を見れば
これがヒトラーだとすぐに分かります。

けれど当時、真っ正面から
エンタメで噛みついたのはチャップリンだけでした。

他のエンターティナーは、逆襲や復讐を怖れて
ひっそりとしていたり、ささやかな嫌がらせしかしてません。

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米国のテレビショーで
クリントン夫人とトランプ氏のそっくりさんが
「すれ違っていた二人、今、愛し合おう」
とデュエットする
こうした物が本来のパロディーであり
お笑いでした。

マイノリティーに無理矢理、光を当てて、そのリアクションを楽しもうとするのは、間違えれば単なるイジメになります。

バブル期の保毛男の、弟として、セクシャル・マイノリティーとして、社会人としての成長と自立への物語は本当に良かったです。
そのストーリーから切り離して
キャラだけを演じたのですが、
シリーズを知らない若い世代が見て
差別的だと感じるのは真っ当な事です。

例えば
「その後の保毛男」
であれば
こんなにもバッシングはされなかったと思います。

姉が嫁いで、お屋敷に一人暮らす中、変わらずドタバタを繰り広げたり
家族を作ったりする保毛男であれば
私は見たかったです。

あのバッシングされた保毛男は
私の好きだった、姉の幸せを願いながら、自分を変える事がなかなか出来ずに悩む、健気でいじらしい保毛男ではありませんでした。

ひっそりと目立たないようにしているマイノリティーや、弱者の物真似をして泣かせる意地悪な小学生男子みたいです。

こんな風に、私の愛したキャラクターがオモチャにされるのは悲しい事です。

私の愛した保毛尾田保毛男、カンバック。


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いつも読んで下さって
ありがとうございます。


性は真面目に取り扱う事が必要だと
今回は書いてて痛感しました。