夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

漫画の源平合戦~平安情瑠璃物語・他~

皆さま、おこんにちは。

祇園精舎の鐘の音 諸行無常の響きあり。

歴女は江戸時代や戦国武将について詳しい人が多いです。特に平安・鎌倉時代に詳しい人は、地道に勉強してる方が多いので脱帽・平伏いたします。

平安時代鎌倉時代となると史料が少ないって言うか、史実かどうかの裏付けが大変なんです。

また、貴族から武士階級ブレイクの変換が緩やかに起こってきます。それを巡って、生活スタイルにも変化がどんな風に起きたか、調べると面白いです。

この源平合戦を背景にした、オススメの漫画をいくつかご紹介します。

小説では、衣装や建築物のパッと見た身が分かりにくいので 、漫画は最適です。

 

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上記はラストに。


華の王 上 (朝日コミック文庫 い 70-1)

華の王 上 (朝日コミック文庫 い 70-1)

 

こちらは、北条政子の視点から描かれています。

なので、乙女な北条政子です。

関東と京の都、そして平安から鎌倉時代にかけて、当時は一夫多妻がまだまだ残っていた中で、ファースト・レディーのカテゴリーをどう作ったのかが興味深いです。

平安の頃は、夫は複数の妻と別居婚で、通いに行く「通い婚」です。

やがて一夫一妻制になり、夫婦が1つの家で暮らすスタイルになりますが、この時期の少し前辺りから、関東を中心に一般的になります(合理化)。

それと、この漫画では源頼朝が、どっかのヴィジュアル系みたいです。 

 

ジパング 深蒼海流(21) (モーニング KC)

ジパング 深蒼海流(21) (モーニング KC)

 

源義経視点。

細かい所に間違いがあったり、歴史物を読んでるとイラッと来る事が多いのですが、この作品も間違いが見受けられます。

が、あんまり気にならないのは主人公が 

 

 

いつ、タイムスリップするのか

 

 
気になってしょーがないからでした。
普通の歴史物ではなく 
 
 
モンゴルに渡って
チンギスハーンになる
 
 
とゆー超絶トンデモ展開を楽しみにしてたのに。ただ、濃い人間ドラマが続きます。
 
予習、終わり。
 
 
平安情瑠璃物語 (中公文庫―コミック版)

平安情瑠璃物語 (中公文庫―コミック版)

 

 

それはおそらく

1180年とおぼしき常陸の国。

使用人の左中太が貧乏な家を、お使いのため主と共に訪れます。

 

住んでいるのは、十二才の美少年と、彼を育てた叔父という人物二人。

生活はギリギリみたいですが、この少年・槐丸(えんじゅまる)は、志田先生義廣・源義広の御落胤だと言われます。

けど、認知はされてません。

その代わりに定期的にお金や物を与えられています。

義広の方も身に覚えがあったのでしょう。じゃなきゃ、生活の面倒はみないと思います。

左中太は、孤独な上に、ホントかどうだか分からないけど、源氏の血を引くゆえに誇り高い槐丸に強く惹かれます。

家来と言うか家臣と言うか、かしずく人間の多さで値打ちが決まってしまう当時の武人です。 

槐丸は無理矢理、元服し、定期的なお手当てを断り、その代わりに兵士の一人に入れてもらいますが。それでも直接、父親とは会えないまま。

この時期は源氏の中でもちょっとした内乱が起こってて、義広は木曽義仲と組み、クーデターを起こそうとしていました。

先に言っちゃうと、頼朝の弟・源義経にボロ負けするのですが、そこに至るほんの四年間くらいの間、左中太は槐丸に尽くします。

武功を上げないと親に子供だと名乗り出る事も出来ない辛さ。

この王子様、美貌な上にプライドは高いけど、生活能力はゼロ。

それで共依存みたいな関係が始まるのですが、自力では何にも出来ないので、左中太が時には盗みまでして、食わせています。

それが自分でも分かっていたのか、軍から外れてしまい、武者狩りに襲われた時、自分の肉体を与える槐丸。

 

主と下僕の関係にこだわり、本心を見せず、誇りを捨てない槐丸と、ヒーコラしながら彼を食べさせるために頑張る左中太。

木曽義仲の息子なんか、自分とそんなに変わらない歳なのに、親の名前を一字もらって、しか人質として頼朝の所に居る。自分は認知されないし、会ってももらえないし。

 

槐丸と左中太は倒錯した肉体関係に陥ります。

時には放置プレーも交えて、無茶苦茶される左中太。

このあたり、谷崎潤一郎の「春琴抄」に通ずる所があります。

けれど、左中太も分かっている部分があります。自分も親に捨てられた身の上。槐丸の行きどころのない悔しさや怒りを、その身に受けて、理不尽な命令でも、それで槐丸が満足するなら何でもします。 

そうこうしてる内に、義仲が討ち取られたのと義広が行方不明の噂を聞き、激しく動揺する槐丸。

父親が死んだら、完全に認知される道はなくなるし、今までだって自分のアイデンティティーがグラグラ揺れているのを、必死で誇り高く生きてきたのに。

 

追い付く事も叶わない中、槐丸は病んで行きます。

 

この壊れっぷりがすごいです。

ヤンデレ」は

いろんな女の子キャラがいますが、こうした男の子を描かせたら天下一品の竹宮恵子先生です

農家の畑仕事まで手伝って食べ物を手に入れ、励まし、抱き締める左中太。

ようよう京の都に着きますが、戦渦は去った後。

それぐらい義経の兵は強かったのです。

これ以上、壊れたくない槐丸と、壊したくない左中太。

 

これってBLという括りに入れるには重いです。

男子校であんなことやこんなこと、というような「プレイ」ではなく。

 

苦痛の姿がまるで快楽に濡れたように彫像のように、哀しみがメルトダウン寸前の熔鉱炉のように、描かれる表情の一つ一つが美しいです。

二人のそれぞれの選んだ道は切ないです。

親に顧みられない子供である心情や、言葉を介さなくても通ずるようになっていくシーン、特筆すべきは、映画で言うところの「マクガーフィン」が「指」である所、その指をどう使っているかを見て

「ああ、この二人は癒されないまま大きくなってしまったんだな」

と思えます。

 

男性の「名を上げ功を成したい」という願望と「子供が持つ、自分は何にでもなれるハズ」という全能感、その崩壊の行き着く場所としての受け皿となる左中太が哀れです。

左中太が現実的ではない、あくまで「少女漫画の中での醜男」な所、「志田先生義広十六朗義信」という人物が、実在したかのように、思わせるリアリティー、もう感嘆するしかありません。

竹宮恵子先生は、現代の紫式部でしょうか。この血なまぐさい時代に「耽美」を持って来るとはズルい‼

 

是非、お読み下さい。

吾妻鏡」を読みたくなる事でしょう。

 

いつも読んで下さって

 

ありがとうございます。

 

 

男の愛って、哀しい。