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「鬼滅の刃」の社会学。~その1ブレイク要因~

長らくお休みしてました。すみません。

三週回って、今頃「鬼滅の刃」にハマってました。

第一話「残酷」を観て、「?????」。

チクワくわえた少女を連れた少年。
チクワ少女は伸縮自在。
そんで富岡さんが現れて「鬼だからコロス」と言われて命乞いする兄。
生殺与奪の権利を他人に握らせるなっ!!」
と激昂する富岡さん。


訳が分からない。

ところが、そこからが始まりでした(「沼」の)。
私の主腐活動が。
単行本や関連書籍を買うだけでなく、時代考証本を買い漁り、二次創作にまで手を伸ばし「薄い本」を買う私。
それを見て、心配したり笑ったりする相方。

さて、アニメの実質、第三期と言える「遊郭編」で盛り上がってますが、このアニメが何故にこんなに人気が出たのか。
ストーリーやキャラクターの分析は、他のブロガーさんやYouTuberさんが鋭く切り込んでますので、私は少し視点を変えてみます。


2019年の放送時は、深夜枠なのもあって、視聴率10%以下と、「大ブレイク」とは言い難い状況でした。
原作ファンやアニメが好きな人は見ていても、中高年や高齢者までもが知っている、という現在の状況とは遠かったように思います。
また、アニメなのに、夥しい流血や首やいろんな物がフッ飛んだり「ギリギリな表現」が多いです。
なのに、なのに。そうした残酷描写も乗り越えて、子供だけではなく、その親も祖父母も夢中にさせてしまったのです。

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それについて考えてみます。


①コロナ禍によるロックダウン

これがブレイクの要因第一だと思っております。
仕事も学校もリモート。
買い物さえも最小限。
暇。

で、ネトフリなどでドラマや映画でも観るか…………といった人達が、うっかりアニメ全話を見てしまいます。
ジャンプ漫画のスローガン、「努力・友情・勝利」を踏まえつつ、それでいて小さくまとまっていない世界観!

えー、これ、続きはどうなるの?

とアニメ第一期の続編になる劇場映画「無限列車編」を見ます。
結果は言わずもがな。
かつてジブリもなし得なかった興行収入四百億という快挙へと繋がります。


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②劇場版の大成功

テレビ版のアニメも見てないハズの世代が感動したのが、劇場版「無限列車編」です。

子供や孫に頼まれて劇場に来た両親・祖父母が

泣きます。

こんな光景、「クレヨンしんちゃん モーレツ 大人帝国の逆襲」以来です。

会社では定年近い管理職が涙目で
「いやぁ、煉獄君は偉いよ!」
と語ります。

この劇場版の大成功を機に、漫画やアニメとは遠い生活を送っていた世代が「鬼滅の刃」を知る事になります。
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③大正時代という背景
江戸時代や明治時代ではなく、大正時代というのがミソです。
まったり落ち着いていた江戸時代、文明開化で慌ただしかった明治時代。

第一次世界大戦によるバブル景気で、一般庶民も豊かになり始めます。
女性はお洒落になり、電気やガスのインフラが整備され始め、洋食文化も根付いて来ます。

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女学生は、束髪にリボン、袴にブーツと、斬新かつカッコいいファッションに身を包み、一般ピーポーも、大正三大洋食「カレーライス・カツ丼・コロッケ」を食べるように。

洋菓子も普及し、一気に食卓は華やか。
https://youtu.be/sXTHDCreKSA

反面、政治はどこか不安定で、物価の乱高下が激しい時代でもありました。

しかし、呉峠先生の、日本画的な絵がひじょうにマッチしている世界観。
ここに金の鉱脈を見つけた担当編集者は素晴らしいです。

④余白の少ないバトルシーン
主人公達は日本刀を主に使って戦いますが、説明が多く、脳内であれこれ考えて戦っています。
これがウザイと読むのを止めた人もいますが

バトル漫画を読み慣れてない私には大助かり。

しかも初期の頃はバトルシーンがこなれてないので、「次は右足出して軸にして、体を回転させて」という説明がないと、何がどーなってるのか分かりません。
それを更に補足したのがアニメです。
「霹靂一閃 六連」
の何がすごいのか、どういう技なのか、アニメを観てようやく分かります。
何より、技のエフェクトが素晴らしいです。
主人公の炭次郎の「水の呼吸」では、まるで浮世絵のような紋様が溢れ出てきます。
こんな美麗なバトルシーンは(多分、あんまり)ありません。

⑤余白の多いキャラクター
アニメでも、設定や出自をあえて説明せず、読者に任せる手法が一時流行りました。
が、その余白が多すぎてエヴァンゲリオンなんかは難解になって行きました。

しかし、「鬼滅の刃」では、この「説明されない、キャラクターの隠された部分」が絶妙なんですよね。
ヒトというモノは多層的な生き物です。
その抱える闇や悲しみ、そこの見せ方が巧み。
これについては、後述します。

⑥神回が続く
テレビアニメ19話は神回と言われています。
そして、我妻善逸ファンには17回が素晴らしく神回。
「無限列車編」は全部が煉獄杏寿朗の回と呼んでも差し支えないほどです。
そして、「無惨様パワハラ会議」。
これは、アニメ製作のufotableのおかげでもあります。
CG多用で、とにかく凝った映像です。
建築物の素晴らしさ(無限城などは実物化不可能)が、建物ひしめく遊郭でどう生かされるか。

⑦「鬼」は病や社会不安の隠喩
もう、言うまでもありません。
作中の鬼は、日の光で死んだりします。
人間が襲われて、傷に鬼の血が入るとその人も鬼化。
まるで吸血鬼かゾンビ。
そして、鬼はスッゴく綺麗なモノか、逆に醜悪なモノかに二極化されてます。
そこに「ヒトとして闘う」鬼殺隊。

バトル物は近未来か、別の並行世界が多いですが、はっきり過去のジャパンなのが斬新です。

腐女子の大量参入
そこそこスマッシュ・ヒットしていた漫画ではありましたが、女性の人気はそれほどでもなかったようです。
しかし、単行本8巻に差し掛かり、「煉獄杏寿朗」という人物が大きくフォーカスされるにあたり、怒涛のように腐女子貴腐人・主腐が参戦。
山のような二次創作が作られ始めます。
女性の情報拡散力と「作品への愛」は、ハンパないので、「鬼滅の刃」を一気に超メジャー作品へ押し上げる力となります。

⑨経済効果
男性にしろ女性にしろ、オタクと呼ばれる人達は、愛するキャラのグッズや、世界観をテーマにしたコラボカフェなどが好きです。
しかし、そこだけに留まる事はありませんでした。
チェーン展開している飲食店とのコラボ、オモチャメーカーなど、いろんな所が「鬼滅の刃」関連の商品を出します。
特に大きいと思ったのは、「コンビニで入手出来る、インスタント食品やジュースやお菓子」。
女性は細かいグッズを少しずつ集める傾向もあってか、「鬼滅の刃」の名を冠しただけの菓子類、本格的にイメージした(やや高級な)スイーツが売れまくります。

ノベルティ商品も増えてきて、ぬいぐるみの他にも、クリアファイルやハンカチのような、日用品が売れます。

ぶっちゃけ、「鬼滅の刃」のおかげで

倒産の危機からV字回復した会社

が現れ始めました。

コロナ禍で苦しい思いを強いられていた日本経済が、回るようになりました。


さて、本日から「遊郭編」放送開始ですが、ファンはこのアニメに、キャラに、何故こうも惹き付けられるのか。
後数年で還暦の私を、ハマらせたのか。
その魅力の分析を、社会学心理学物語工学から、したいと思います。

次回、乞うご期待!


続く。