夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

絶歌~7.ゲームの始まり~

熊沢は淡々と語った。 「2月、Aと同じ中学の3年生、彩子(仮名)は」 「『(仮名)』 とか言わないで」 「自宅に帰ったある日、 誰かがしつこく玄関のドアノブを回しているのを見て戦慄します。 その数日前、 Aは新しい上靴を彩子(仮名)に踏まれています…

絶歌~6.黒い羊の定理~

熊沢は 社長の質問には直接答えず 再び話をずらした。 「手記の父親パートですが『……でした』 『……がありました』と朴訥と言うか 言葉での表現が苦手な方です。家庭では妙に影が薄いんですが」 「『男や父親としての ロールモデルにならない』とかゆーやつね…

絶歌~5.我が子をモンスターにするには~

熊沢は冷淡な口調で言った。 「『少年A』、 面倒くさいですから、Aで通します。その両親の手記は読まれたとおっしゃいましたね」 「ああ。 まあ、フツーに『加害者の親の手記』 としか感じなかったけど」 「それが当たり前の反応だと思います。ただ、 当時の…

絶歌~4.殺人ボランティア~

「その可能性」を全く持ってなかったのだろう。 少し青ざめ、 唇を震わせて言った。 「もしや…………代理人がか?」 熊沢は相変わらず、無表情で答えた。 「それは分かりません。 けれど、 社長もこの手記を読まれましたよね?違和感があるんです。 『事件に至…

絶歌~3.○○を持った渡り鳥~

社長はため息をついた。 確かに「未成年者の凶悪犯罪」だった。 当時19才の永山則夫はピストルで四人の人間を殺傷している。 「拳銃での犯罪、 ってのは 今でもレアなケースですね」 熊沢は眉1つ動かさずに言った。 「北海道でネグレクトに近い育て方をされ…

絶歌~2.無知の涙~

都内、某出版社。 「おおい。熊沢君は?」 社長は熊沢の姿を ここ10日ほど見ていない。 オフィスの入り口で声をかけると 忙しそうにしている別の男性社員が答えた。 「熊沢さんなら、 ずーと、使ってない物置部屋にいますよ!」 物置部屋と言うか たまに在…

絶歌~1.前夜~

〈このストーリーはフィクションです〉 都内、某出版社。 「おおい、プー君いるかい?」「社長。 本名が熊沢だからといって 『プー君』はやめて下さいと何度も言ってますが。 まるで働かないでブラブラしてる男性みたいじゃないですか。 このナイスバデーな…