2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧
熊沢は淡々と語った。 「2月、Aと同じ中学の3年生、彩子(仮名)は」 「『(仮名)』 とか言わないで」 「自宅に帰ったある日、 誰かがしつこく玄関のドアノブを回しているのを見て戦慄します。 その数日前、 Aは新しい上靴を彩子(仮名)に踏まれています…
熊沢は 社長の質問には直接答えず 再び話をずらした。 「手記の父親パートですが『……でした』 『……がありました』と朴訥と言うか 言葉での表現が苦手な方です。家庭では妙に影が薄いんですが」 「『男や父親としての ロールモデルにならない』とかゆーやつね…
熊沢は冷淡な口調で言った。 「『少年A』、 面倒くさいですから、Aで通します。その両親の手記は読まれたとおっしゃいましたね」 「ああ。 まあ、フツーに『加害者の親の手記』 としか感じなかったけど」 「それが当たり前の反応だと思います。ただ、 当時の…
「その可能性」を全く持ってなかったのだろう。 少し青ざめ、 唇を震わせて言った。 「もしや…………代理人がか?」 熊沢は相変わらず、無表情で答えた。 「それは分かりません。 けれど、 社長もこの手記を読まれましたよね?違和感があるんです。 『事件に至…
社長はため息をついた。 確かに「未成年者の凶悪犯罪」だった。 当時19才の永山則夫はピストルで四人の人間を殺傷している。 「拳銃での犯罪、 ってのは 今でもレアなケースですね」 熊沢は眉1つ動かさずに言った。 「北海道でネグレクトに近い育て方をされ…
都内、某出版社。 「おおい。熊沢君は?」 社長は熊沢の姿を ここ10日ほど見ていない。 オフィスの入り口で声をかけると 忙しそうにしている別の男性社員が答えた。 「熊沢さんなら、 ずーと、使ってない物置部屋にいますよ!」 物置部屋と言うか たまに在…
〈このストーリーはフィクションです〉 都内、某出版社。 「おおい、プー君いるかい?」「社長。 本名が熊沢だからといって 『プー君』はやめて下さいと何度も言ってますが。 まるで働かないでブラブラしてる男性みたいじゃないですか。 このナイスバデーな…