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ブラック・ダリア事件~6.増える被害者と容疑者~

注意※画像は普通の物しかありませんが、文章に残酷な物が含まれています。
耐性のない方はご注意下さい。

切り裂きジャック」の真犯人をいまだに探す人がいるように
ブラックダリア事件も世紀を越えて様々な人を魅了しています。

そして
「自称犯人」
が減ると
さすがに月日が経ってるので、自分が犯人、ではなく

「オレの父親が犯人」
「いえ、アタシのダディが犯人よ」

と本を出す人が現れます。

そのうちの一人かと思った
スティーヴ・ホデルさんは他とはかなり違い、突出した「読ませる」内容の本を書かれています。

「ブラックダリア事件の犯人は、私の父親ジョージ・ホデルだ」

と著作では主張されています。
それが妙に信憑性がある理由なんですが
このスティーヴさんは長らく、ロスアンジェルス市警で刑事をされていたのです。

ブラック・ダリアの真実〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)

ブラック・ダリアの真実〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)

ブラック・ダリアの真実〈下〉 (ハヤカワ文庫NF)

ブラック・ダリアの真実〈下〉 (ハヤカワ文庫NF)

スティーヴさんの父、ジョージ・ホデル氏はエリート教育を受けた外科医ですが
結婚と離婚を繰り返してて
家庭人としてはどうかなぁ
というタイプです。

91才で亡くなった後、息子さんであるスティーヴ氏は
遺品から小さなアルバムを見つけます。
中には自分を含めた家族との写真
スティーヴさんのお母さんの若い頃
などなどの中に
どうしても誰か分からない、けれど見覚えのある女性の写真を見つけます。

うっとりと瞳を閉じて半裸に見える若い女性。
もう一枚は同じ女性が着衣で
けれど、やはり瞳を閉じてポーズをとっています。

誰だか分かりませんが、家族の写真と一緒にしていたぐらいだから、大切な人だったんだろう、それにしても、どっかで見た事がある…………。

スティーヴ氏はひらめきます。


これは「ブラックダリア」だ!
エリザベス・ショートだ!!

上巻は、いかに父・ジョージが人としてヤバイかが延々と書かれています。
下巻は証拠の品やたくさんの推察です。

感情を交えず淡々と書かれています。

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アルバムの写真

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新聞でのエリザベス・ショート


似てるっちゃあ、似てます。
鼻の形なんかはそっくりです。
ただ、アルバムの方はふっくらしています。
もし、エリザベス・ショートだとしたら、事件よりかなり前の頃でしょう。

しかし、決定的に違うのは

生え際。

額を見ると、アルバムの女性はM字型です。
エリザベス・ショートは他の写真で見る限り、額が丸いです。

スティーヴ氏はこれでもかとばかりに状況証拠を積み重ねて行き
当時連続していた女性殺人事件も
ゾディアック事件も父・ジョージだという見解を示しています。

ウィルソンがテープで言っていた
「中国人の貸家」
なんですが、ジョージ・ホデル氏は東洋趣味で
確かに東洋的な屋敷を建てて住んでていました。

ただ、私が思ったのは
アルバムの写真には

被写体への愛情があふれている

のです。
撮ったのがホデル氏でないとしても、こうした美しい写真を家族の物と一緒に保管し
終生大事に持って
時折、愛でていたのです。

その被写体に
拷問や胴体切断をして顔を切り裂き
全裸で遺棄出来るのか。

http://stevehodel.com/
スティーヴ・ホデル氏のサイト

話は変わって、ブラックダリア事件の前に
若い女性が
やはりハリウッドで殺害されました。

ジョーゼット・バウアードルフ。
二十歳。
ベスと同じく、兵隊相手のバーでジュニアホステスをしていました。
自室の水が溢れるバスタブにうつ伏せになっている所を発見されます。
激しい暴行を加えられた形跡と
下半身は裸でした。
死因は喉に詰められたタオルによるものでした。

行動がベスと重なる部分が多いので、同一犯人ではないかと捜査を始めようとします。
この時の容疑者に上がっていたのが
前回にも出たジャック・アンダーソン・ウィルソンでした。

が、彼女は富豪の娘さんでした。
父親は新聞王ハーストと昵懇の間柄。
娘の死にまつわるスキャンダルを恐れて父親がハーストに頼んだのでしょう。

ハーストから取材にストップがかかり
やがて警察へも圧力がかかります。

結局、犯人は不明のまま。

ここでスティーヴ氏は重大な証拠を書類から見つけます。
ジョーゼットを窒息させたのはタオルと発表されていましたが
真実は医療用の伸縮性9インチ包帯でした。

亡くなった父親への嫌疑をますます深めるスティーヴ氏。

けど、こんな分かりやすい証拠を残していくとは思えないぐらい
父・ジョージ・ホデル氏は頭が良過ぎる人でした。

ところで、スティーヴ氏は
レスラー氏のような「プロファイリング」については、あまり信用していないと自身の本では見解を示しています。

本当にそうなのか、と疑問に思う私。

まず、この時期に全裸や半裸で殺され、遺体を遺棄された女性のタイプが広範囲過ぎてます。
こうした性的犯罪の場合、加害者の狙う対象は、年齢や外観など、似ている人を選ぶ傾向があります。
が、見事にバラバラです。

そして、こうした「セックス殺人」の場合加害者は激しい暴行や遺体への損壊の後
エネルギーを使い果たして廃人同様になったり自殺したりします。
「人として終わり」
になる訳です。

写真家のマン・レイの作品へのオマージュとして、遺体をあんな風に置いた
とありましたが、だったら、そもそも切断の意味はなんでしょうか。

そこまで怜悧であれば、社会的な地位に固執していたホデル氏の事ですから、
犯罪をアートみたいに扱う下品な事はしなかったと感じます。
それこそ、写真撮影や絵画を自分で描く趣味のあった人です。
作品にぶちまけます。

ウィルソンが
「切断した後、下半身は逆さにバスタブに入れていた」
と言っていますが、
遺体の腰の上部が浮いた形で固まっていたのは、これで説明がつきます。

もう、こうなると混乱の極みですが
やっぱり複数犯ではないか。

しかも、犯人はエリザベス・ショートの卵巣を抜き取っています。
それをどうしたんでしょう。
それこそ、切り裂きジャックの真似でしょうか。

ハリウッドセレブや暗黒街の人間が集まるSMパーティーの、無惨な被害者になったと、いかにも映画的な事を書く人もいますが私には分かりません。

なんか、もっと、おバカさんで
被害者が死んだ後も自己顕示欲満載で
そういう人間が加害者で
遺体を遺棄した結果にも思えます。

ただ、言えるのは
行くアテもなくお金もないベスに優しく声をかけて拉致した人間がいたのです。

そして、美人であるがゆえにか、いままでひどい目に遭った事のない彼女は
相手の善意を期待して着いて行ったのです。

ミッシング・リングはどこで解けるのでしょうか。


いつも読んで下さってありがとうございます。

次回は最終章です。