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笑いは叫び~「JOKER」~

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皆様、大変、ウルトラスーパー・ギガントお久しぶりです。

何故にブログを休んでいたかは、いつかまた。

ネトフリに加入してたのが分かったので(どういう契約の仕方しとるんじゃ、ボケ私)、映画観まくそでした。
それと、最近はスマホでも観れるんで、ホント良い世の中になりました。
TSUTAYA行かなくても良いし。

で、「JOKER」ですが、これはスゴい映画でした。

以下、ネタバレ特盛りなので未見の方はお戻り下さい。






ストーリーを時系列に書くのほ、他の方がされてますので、ストーリーのネタバレはそちらでお願いします。

てか、三回観たけど、考察が止まりません。


https://youtu.be/C3nQcMM5fS4
予告編

アメコミのバットマンは読んでないのですが、読んでなくても、別の世界として完成されてます。
よく「ダークナイト」と比較されてますが
「悪のカリスマ」としてのジョーカーでないんですよね。
ダークナイト」のジョーカーは、「悪も貫けば美学になる」のかっこよさがあります。
が、この映画ではちょっと違うのです。

要介護のお母さんの世話をしつつ、ピエロの扮装で日雇いの仕事をしているような

「心優しき青年が、何故して悪の権化になったか」

というのでもない。

オープニング、ピエロのメイクしている主人公・アーサーがポロリと泣きますが、ここからして伏線。

彼はトゥレック傷害で、可笑しくもないのに突発的に笑う病を持ってます。

この笑い方がホントーに怖いし気持ち悪いです。

NYを舞台にした八十年代前半の、ゴッサム・シティ
失業者が溢れ、ゴミの回収も来ないから、街の中はゴミとネズミだらけ。

アーサーはお母さんに「ハッピー」と呼ばれ
「人を笑顔にしてあげなさい」
と言われています。

ここで思ったのは、この脚本を書いた人は、古今東西の物語に精通してるなって事でした。

ワザワザ、「アーサー」という名前があるんですよ。
で、「アーサー」と言えば「円卓の騎士」です。

人を惹き付ける主人公は、なんかしらの欠落を抱えています。
アーサーの場合は何か。
これも冒頭で出てきますが、ネタ帳から分かります。
文字はグチャグチャ、誤字脱字だらけ。
何らかの発達障害もあるようです。

つまり、「いろんな意味で欠けた部分がある」なんですが、これは「ヒーローの条件」でもあります。

何よりも、アーサー本人はピエロではなく、コメディアンになりたいんですよね。
円卓の騎士の方同様
「選ばれた存在」になりたいのではないか。

「この映画は、ラスト以外、最初からアーサーの妄想だ」

という考察も多いのですが、私は
「妄想と現実を行き来してる」
と思います。
理由は、尊敬するコメディアンのマーレーに褒められる夢想や、恋人との日々を考えると
「妄想の中でも妄想する」
のは難しいんではないかと。

映画の最初の方で、閉店セールの看板を持ち、踊っていたアーサーが、街のクソガキどもに看板を奪われブッ壊されてから、物語は目まぐるしく転がり始めます。

社長に叱られてる時のアーサーの微笑みが
めっちゃ怖いです。
これ、やれと言われても簡単には出来ないです。
微笑んでるのに、瞳はランランとしています。

そんでアーサーの、中年にさしかかった、萎びた体。
このホアキンス氏は元々ガッチリ体型で、監督に痩せるように言われてましたが、なかなかダイエットを始めなかったそうです。
撮影開始二ヶ月前になって、ようやく「リンゴだけダイエット」を始めて、20キロ落としたそうです。
だから、張りのない疲れた肌や痩身が、すごく、いろんな想像をかきたてます。

要介護の母親の世話で出てくるのも、なんと「テレビディナー」です。

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日本では流行りませんでしたが、米国ではポピュラーな冷凍食品です。
三百円から五百円で買えるし、電子レンジでワンプレート出来上がり。

メインにステーキかハンバーグ、付け合わせにマッシュポテトやミックスベジタブル。
リンゴのコンポートやチョコムース付き。

アーサーの収入が低く、自炊する能力もない、てのを表すシーンだと思います。


さて、正当防衛に近い形で人を殺めてしまったアーサー。
その後、駅のトイレで「不思議な踊り」を踊って帰宅。

そんな事など忘れたように、コメディアンのライブに行き、笑いながらネタ帳を書くアーサーなんですが、一見、ケナゲに見えます。

「笑うタイミングが他の客とめちゃくちゃズレてる」
のがミソです。

ある日、アーサーは母親が昔、勤めていた屋敷の、富豪との間に出来た子供だと知らされます。

会いに行くアーサーですが、これも凝ったシーン。

「何故か、タキシード姿の紳士達が、市民ホールで、チャップリンの『モダン・タイムス』を見ている」

というシュールさ。
タキシード着て観なきゃいけないような映画ではないからです。
富豪からは、アーサーの母親とは何もなかったと、にべもなく拒絶。

調べると、母親は自己愛性人格障害で、妄想癖が強く、何かトラブルがあった模様。
自分は養子。しかも、母親の恋人からひどい虐待を受け、そのせいで笑う病になった事を知ります。

で、ここで観客も気付くのですが
「たいていの人が持ち得る、子供時代の思い出が、アーサーにはない」
という所です。

母親の恋人から受けていた虐待が本当にひどく、あんまり辛いので記憶から抹消したのか、あるいは、頭部に受けた怪我のせいで、器質的な記憶障害になったのではないか、と、つい想像してしまいます。
そして、そうした過酷な仕打ちから、母親は守ってくれなかった訳です(介護までさせてるのに、経済的には超不満)。

「自分は悲劇のヒーロー」だと思っていたからこそ、仕事もネタ作りも頑張って来れたし、貧乏も耐えられた、オカンの介護もそうでした。
なのに、そうですらなかった文字通り「喜劇のピエロ」な自分。


アーサーの再びの殺人。

ここも、何か切ないです。

救いがどんどん、無くなっていきます。

続いて殺人。
もうムチャクチャ。

母親の語る過去、母親本人、初めての理解者だと思っていた恋人。
全てが消え去ります。

反面、街では
「地下鉄でリーマン数人を射殺したピエロ」
がヒーロー扱いされてます。

再び街中で踊ります。

このダンスシーンはスタイリッシュで、文句なくカッコいいです(「不思議な踊り」どうなった。実はこっそり練習してたとか)。

暴動を利用し、警察を上手くまき、尊敬していたマーレーの番組に出演。
ただし、イロモノ枠。
メディアって残酷。
最初は生中継で自殺しようと考えていたアーサーでしたが、ムカつくから、生中継で殺人。

カメラに皮肉を言おうとして
「ただいま、電波の調整中です」
の画面。

明確に、そして自身の意思で、怜悧な思考を持って現れる「ジョーカー」というキャラクター。

そして、暴動のせいで火の上がる街の中心。
ここで「ジョーカー」に生まれ変わったアーサーは、人生初であろう羨望の眼差しに囲まれ、うっとりと笑います。

後のヒーロー・バットマンになる、弟だったかもしれない富豪息子・ブルースに取っては、サイアクの一夜が、アーサーにはサイコーの一夜である対比。

トラウマゆえに「正義の味方」になるバットマン
逆に「社会格差に中指を立て、悪を貫く美学の持ち主」になれば、人々のカリスマになれるジョーカー。

結局、富豪とアーサーのオカンには、「本当にナニもなかったのか?」については分からないままです。

ラスト、病院でカウンセリングを受けているアーサー。

部屋から出てくるアーサー。


赤い足跡。


ギャーッ!!ヽ(;゚;Д;゚;; )

部屋から出て、また踊ります。
右折してフレームアウト。

ところが、アーサーの消えた方角から、看護師達が猛ダッシュして行ったり来たり。
何をやらかしたの。

フランク・シナトラの曲と、妙にポップなエンドマーク。

身につまされる内容でもありました。

ただ、愛されたかっただけ。
そして、愛したかっただけ。
ほんの一時でも、誰かを笑わせてあげたかっただけ。

「ジョーカー」は新しく生まれたキャラではなく、世界にこれ以上、否定されないよう、アーサーが隠し持っていた人格だと、私は思います。

ジョーカー(字幕版)

ジョーカー(字幕版)

  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: Prime Video