夜になっても読み続けよう。

地位も名誉やお金より、自分の純度を上げたい。

奈落の羊~消費される貧困~

体が痛いよ、誰か鍋焼うどんを届けて
な千葉県某所から
おこんにちは。

えー、最近、コンビニでおでんの鍋に指を入れて、ツンツン( ´∀`)σして
それを動画にアップした男性が逮捕されました。

この時のコンビニ店員さんが
「怖くて止められなかった」
と証言してるので、尋常ではないオーラを放っていたのだと思います。

この青年、おでんの方はまだマシだった部類で
他にも奇行をアップしてたそうです。
しっかし、その手の内容って
バイトテロ」
と同じで
「本人だけが面白いと思ってる」
事が多いんですよね。

「奈落の羊」
は、動画配信がモチーフになってます。

主人公の「しゅーじ」は動画配信で有名になって
就職しないでいられたら、と考えてるアホ大学生。

以前は「リクオ」というパートナーと動画配信してた時があって
人気もあったのですが
一人で配信始めたら人気が落ちて焦ってます。

バイトの愚痴とか
コンビニの新作スイーツのレポとか
確かにつまらなさそう。
ちなみに動画サイトはニコニコっぽいです。

そして、ハンバーガーショップで
メイという女の子を見つけます。

ネットカフェ難民
売春してて、もう見るからに悲惨そう。

よるべない身の上らしいので

動画のネタ

にするために寝食を与えるしゅーじ。

メイはまともに他人と会話も出来ず
ボロボロの服装でさ迷ってますから
言いくるめられます。

が、あくまでネタなので
ぬるめのヒドイ事をして、その様子を配信。
たちまち増えるアクセス数。
彼女の衣食住のために、カンパを願うと
あっという間に数万円振り込まれたりします。

かつては幸せで、若い女の子らしかったらしいメイ。
両親が亡くなってから
こんな悲惨な生活になった、けど妹がいる!
よし突入レポート!

が、妹は激しくメイを憎んでいる様子。
この様子も配信し、リスナーは沸きます。

と同時に、
メイについて分からない事が増えて行きます。
何故して、こんなひどい境遇に堕ちたのか。
断片がちらほら見えても
核心が今一つ見えません。

援交組織のリーダー格の女の子
果ては元締めのヤバいおにーさんと
単なる「やってみた」で済まされない世界に巻き込まれていくしゅーじ。

その反面、メイに対して
単なるネタと割りきれない気持ちになってきます。

かわいそうってのは好きって事よ♪

「ドキュメンタリーなら、社会復帰の方向へ行こうよ」

と進めてくる友人。
正論なんだけど、それではつまらないし、実際には難しいと言うしゅーじ。

配信しているしゅーじは
実は、幾重にもリスナーが密かに手を組んで
しゅーじを動かしている事に気付いていません。

それは単なるしゅーじへの悪意だったり
アクセス数とお金を集める事が出来る、現在のしゅーじを利用しようとしてたり。

この作家さんなんですが
ヨイコノミライ
でも、ちょっと心理サスペンスみたいなストーリーが上手いです。

大きな夢を持ってて、それが叶うと漠然と信じている人間に
あちこちから罠を仕掛けて人を動かし
時には上手く煽り、自滅させる。
これが絶妙です。

大きな夢≒無謀な企み

な人がいます。

大した努力もせず、成功を信じてて
実際は、自分が大好きなだけ。

先行きが見えてしまってる人間からするとイラッときます。

「企画」と称して、過激になっていく配信。
この「企画」はえげつない事はえげつないのですが
しゅーじがメイに情が移ってきているせいか
どっか、ぬるいです。

アクセス数ダントツ。
コメントの嵐。
お金ザクザク。

これはもう辞められません。
警察沙汰になっても、自分で何とかしようせず、リスナーにどうしたらいいか聞くヘタレぶり。
アクセス数とお金に目が眩み、危険な配信を止められない状態に。

一種の自家中毒になっちゃってます。

動画サイトで数十万回再生されても
レコード大賞貰えるとか
オリコン一位!になる訳でもないのに
「オレ、すげぇええええええっ‼」
状態。

この漫画の怖い所は
「ネット社会の闇」
などではない所です。

援交組織の女の子が
「底辺とそうでない人間なんて大した違いがない。
それに人は気付いていない」
みたいな事を言います。

自分も明日はメイのように
極寒の街の中、コートも着ず彷徨う事になるかもしれないからです。

「ネットの暗闇」などではなく、
言わば
「ネットで可視化された
誰にでも起こり得る不幸」
がそこに存在します。

そして、メイの周りの人間は
やはりメイと同様な境遇の人間が多いです。

妹から激しく拒絶されますが
…………これって妹も
「見返りを求めず、安心して甘えさせてくれる人間」
がいない、って事です。

裸や、それ以上の事をメイにさせると
すぐに飽きられるから、と避けていたしゅーじですが
やっぱり情が移ってきてます。

ますますメイを放っておけなくなってくるしゅーじ。

そして
「底辺の生活がコンテンツにされている」
のが現状です。

「ちゃんとお勉強しないと、あんな風になっちゃうよ~」

と「自分は底辺ではない」と思っている人達の
カンフル剤にしかならないし
本気で心配して
手を差し伸べてくれる人はいません。

だから一度こうした生活に陥った人達は
助けて欲しいと言えなくなります。

この作家さんは
エグい中にも前向きなエンディングを作るので
どうなるか。

配信者として非道を貫けないしゅーじと
「コンテンツとしてのメイ」
に対するせめぎ合いが
どう変化するのか。

実際に「貧困・底辺の女性」って記事が
ネットにはあふれてますが
相手と真に向き合って心配してくれるライターは
「家のない少女たち」
鈴木大介さんぐらいです。
取材のせいで鬱になったり
取材相手にお金を貸したりしてます。

他のライターは、ワザと痛々しい外見の女性を取材して
「ほーら、可哀想だろ?
無理してでも働いたり
妥協してでも結婚しないと、こうなっちゃうよ~」
てな悪意ある内容ばかりです。

「世の中を良くしたい」
という志の有無が文章に出ます。

メイは昔の私です。


私なら
とりあえず、メイに
鍋焼うどんを食べさせてあげたいです。


[まとめ買い] 奈落の羊(アクションコミックス)


いつも読んで下さって
ありがとうございます。

この漫画の真似する輩が現れない事を切に祈っています。